カテゴリ:昌子俳句の近作( 2 )
昌子俳句の近作(平成31年~令和元年)

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   春寒の汀のここは松林

   あれは鷹いやあれは鳶耕せり

   一寸の廂つけたる巣箱かな

   古家の(すさ)をあらはに冴返る

   山の名は山本山よ初諸子


   町の名の池田といふはあたたかし

   下萌に郵便受けの大いなる  

   うすらひやとぎれとぎれに一面に 

   草焼いてげんこつ飴をいただきぬ

   古き雛ふとよきこゑをもらしけり


   どの舟も古りて湊や福寿草

   冬座敷鷗は脚を見せて飛ぶ

   裸木につぎの雲来て細長き   

   この椅子はこころ覚えの日向ぼこ

   餓鬼の身を春一番にもたげたる

   白無垢の霜月に生る赤子かな


by masakokusa | 2019-05-05 11:58 | 昌子俳句の近作 | Comments(0)
昌子俳句の近作(平成30年)                


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   卓袱台にみんな笑うて年を越す  

   蜻蛉や影の大きなプラタナス  

   かみごたへありたる飯や獺祭忌

   秋晴の東西線といふに乗り

   夕顔の実や潮鳴りのかすかにも



   なかなかに食の細らぬ秋思かな

   門に干す肌着その他や渡り鳥

   夜長人モーツアルトのほか聞かぬ

   秋風のとんびのこゑが好きになり 

   稲掛けてそこゆく子らの捕虫網   



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   横移りしつつ蝗の糞りにけり

   秋晴の注連をいただく大欅    

   落鮎やここらの家の壁白き

   秋寂びて駅に下りたつ鴉かな

   山の子の大きなこゑや十日夜



   大根干す小学校の庭つづき

   ペコちゃんの舌の出てゐる七五三

   山と海あらば空ある新酒かな   

     悼・吉田良銈氏

   芋食うて「御主」と呼んでくれたまへ


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   白無垢の十一月の赤子かな

   袴着の何か遠くを見据ゑたる

   山畑に小屋のへしやげて小春かな

   短日や垣根に掛けてもの売られ

   義士の日の土塀を長くわたりけり



   おんまへは月影地蔵蒲団干す

   橋渡るときの風よき神の留守

   その幹に脂噴く八ツ手咲きにけり

   鹿啼くや旅の座敷に一人きり

   小春日の柱のどれもエンタシス



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   寒禽の垣根に顔を入れにけり

   ぼろ市を行きて戻りてまた行きぬ

   風邪気味の欄干高く渡りけり

   一葉忌路地におもてもうらもなき

   白障子そびらにまかげしてゐたり


 

   何鳥か二羽の連れ立つ十三夜

   海見えて花野は丘となりにけり

   踏むところなきを踏みゆく飛蝗かな

   秋分の路地はとことん掃かれけり

   蜂をまへ蜂をうしろの稲架日和


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   天もなく地もなく真葛ケ原かな

   登高の孔雀のこゑをあげにけり

   塗り替へて橋の真つ赤や雁の秋

   欄干に肘をのせたる秋の風

   秋蝉や沼にたたへて沼の色



   その裏手文庫ありたる茸かな

   野分だつ烏のこゑを引きあうて

   赤ん坊の顎突き出す鵙日和

   身に入みて屋敷のどこも閉ざさざる

   末枯に邪鬼の歯茎を見せにけり

  


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   駒と駒鼻をねぶれる大暑かな

   絵団扇や柳は墨に蓮は朱に    

   霍乱のいななき遠くなりにけり

   ここはまた影一つなき園の秋     

   残暑なほ雲にたんこぶ出でにけり 



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   一つ木に土用雀のこみあへる

   さるすべり散り敷く苔のむしにけり 

   本殿の裏に水湧く単衣かな 

   蕗の葉に蝉のもぬけのころげたる 

   涼しさの指にかかりて鼻緒かな 



   線香の墓に散らばる南風     

   蚊に食はれやすく引つ込み思案かな

   道逸れて厠に至る風涼し

   白シャツの門に来れば礼深く

   あひびきのかなはぬ盆の月夜かな


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   若葉して戸毎に違ふ壁の色   

   今し行く小倉遊亀かも白日傘

   浜あれば崖ある南風吹きにけり 

   薔薇守の鎌の大いに曲りたる 

   毛虫を見馬追を見る極楽寺



   芒種けふ路傍の草の丈高く

   梅雨さ中まれに蝶々屋根を越え

   わら屋根の藁のすさびのほととぎす

   絨毯を部屋に廊下にさみだるる

   白雲のよく飛ぶところ通し鴨



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   梅雨に咲く花の色かやこつてりと

   小諸なる古城のほとりサングラス

   どれどれと寄れば目高の目の真白

   蛇の衣脱ぐや高濱虚子の前

   大木のそよぎもあらぬうすごろも



   帰省子のそつくりかへる畳かな

   なにがなし触つて枇杷の土用の芽

   釣堀やひもすがらなる風の音

   落し文解きどころのなかりけり

   ひるがほの咲いてこの橋覚えある


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   雨安居のたまさか孔雀鳴きにけり

   八瀬の橋来たれる君がパナマ帽

   蛍火は大峯あきらかと思ふ

   木登りの子のひよいひよいと南吹く

   夜業終へ道頓堀に吹かれけり



   洞に積む薪卯の花腐しかな

   行春の風に琅玕鳴りにけり

   大船にその人を待つ更衣

   軽暖や骨董市の人の顔

   そこらぢゆう煤けて兜飾りけり



   鳰の子を見てゐる涎少し出て

   母の日の暮れ際汗の冷えにけり

   虫干の師範学校ほど遠し

   沓脱の混み合ふほたる袋かな

   鼻高く唇うすくサングラス


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   春宵の大峯あきら語りけり         
   君と行く吉野の奥のあたたかし
   象谷の水に映りて濃山吹
   虚子忌来る松や欅に風の鳴り
   鳥の巣のあるにたがはぬ鳥のこゑ


   一軒に遠き一軒ミモザ咲く
   墓地のある景色かはらぬ紫木蓮
   亀鳴くや不開の門の大いなる
   朝日子に一輪草の濃かりけり
   鵤鳴くほどに大峯あきら恋ふ


   踏青のいつしか野毛といふあたり
   ふと寒くふとあたたかや遅ざくら
   津に住んで津守といへる棕櫚の花
   永き日の丸太担いで来たりけり
   月見草咲き初む浜に市の立つ

                  

by masakokusa | 2019-01-31 22:28 | 昌子俳句の近作 | Comments(0)