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受贈書誌より感銘句(平成30年12月)                  草深昌子抄出


『森へ』宇多喜代子・第八句集(青磁社)

   永劫と瞬時をここに滝しぶき

   球形の大地に懲りて露の玉

   十二月八日のかたちアルマイト

   生きていること思い出す夏座敷

   蛇の手とおぼしきところよく動く

   天高し皇后誕生日なれば

    

   一句は、そして一冊は、時間と空間を自在に往還し、

   百年や二百年を一足で跨ぎ、星々を容易く掴み取る。

   森羅万象の躍動する森へ、いざ。



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『木霊』藤埜まさ志・第三句集(角川書店)

   薪能果てて北斗の大柄杓

   枯れきつて骨うつくしき欅かな

   千空を恋へば十一月の雪

   あぢさゐや十大弟子は頭寄せ

   蝉声の中のひぐらし草田男忌


 自然から人事に至るまでの熟成された洞察力とそれを一詩にもたらす活写力。

   木の精を噴きて大榾も終え始む

 単に木霊からの発想ではない。存在物の実相に見入っての至妙の一句。

 永らく「萬緑」の運営にも貢献してきた中村草田男門の代表作家である。

                                横澤放川 (帯文)  




「鳳」(主宰 浅井陽子)27

   白息をふはと広げて笑ひけり     浅井陽子

   ひとり来て崩れ簗見るひとりきり   森山久代




「ランブル」(主宰 上田日差子)№250

   雨粒にまぎるるほどの秋の蝶     上田日差子

   一粒の米の長さに日脚伸ぶ      久和原賢




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「なんぢゃ」(代表 榎本享)43

   芋虫と怠惰な午後を過ごしけり    榎本享

   立秋の庭木に触れて家に入る     太田うさぎ



「都市」(主宰 中西夕紀)№66

   葉の尖に潮のひかりや砂糖黍     中西夕紀

   夏霧の巌大きく見せににけり     秋澤夏斗



「松の花」(主宰 松尾隆信)№252

   雲ひと刷け二百十日の稜線に     松尾隆信

   天高し栗駒山は谷向ひ        佐藤公子



「群星」(代表 藤埜まさ志)178

    住吉大社観月祭

   朗々と献歌や月の太鼓橋     藤埜まさ志

   新米盛る使ひ込まれし一升枡   佐藤和子


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『語り継ぐいのちの俳句』

     311以降のまなざし        高野ムツオ


  俳句を詠むことが自分の存在証明だった。

  危機にあって言葉で生(せい)を、自己存在を確認していたのだ。 

  これは決して私一人ではない。

  多くの人たちが、俳句に生きる力を得ていた。

  現在ただ今もそうである。

  東日本大震災は、そうした俳句のあり方を私に教えてくれた。


     泥かぶるたびに角組み光る蘆     高野ムツオ



『分度器』井原美鳥・第一句集(文學の森)

   福藁や日は産土へ廻り来る

   漢字帳に母がいつぱい日脚伸ぶ

   行く秋の何せんとして手に輪ゴム

   大いなる分度器鳥の渡りかな

   けふの木の芽あすの木の芽と湧きにけり



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)№765

   冬の蠅いつぴきを追ふ仏間かな     鈴木八洲彦

   上弦の朝月仰ぐ野分晴         菊地ゆき子

 

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「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№40

   墓の辺につどふえにしも素逝の忌      橋本石火

   硯舗に水草紅葉の流れかな         真田瑞枝



「秋草」(主宰 山口昭男)№108

   草籠に草のあふるる帰燕かな     山口昭男

   これ以上小さくなれぬ露の玉     桑山文子



「獅林」(主宰 的場秀恭)№975

   体内の水すぐ乾く残暑かな      的場秀恭

   どの子にも賞品のある運動会     新居純子


by masakokusa | 2018-12-10 15:37 | 受贈書誌より | Comments(0)
「澤」(主宰 小澤實)18周年記念号より ~ 俳句結社誌「青草」を読む


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「澤」平成30年7月号 通巻220号

      窓 俳句結社誌を読む          高橋博子





   「青草」第3号 2018年春季号


 

厚木市の生涯学習の「俳句入門講座」より発足した。

 草深昌子主宰は、〈「青草」の俳句は初めて俳句を作る喜びに端を発したものです。

 これからも飾らない私、子供の心を持った私の句でありたいと願っています〉と冒頭に記された。



   めいめいのことして一家爽やかに     草深昌子

   晴れがましすぎはしないか干蒲団      同


 一句目、ある日曜日。自分の勉強や趣味に一家それぞれ充実した時を過ごしておられる。

 背中に暖かい視線を感じながら干渉しないお互い。気持ちのよい清々しい風が吹き渡る。

 二句目、集合住宅のベランダの風景であろう。

 一家全員の蒲団がぎっしり干され午前の日を浴びている。

 夜には子供たちは陽光を含みふっくらとした蒲団にぐっすりと眠るのだろう。

 健康的な生活感は面映ゆいほど。「晴れがましすぎはしないか」の措辞が印象的。洒脱。




   青蜜柑太る力に揺れてをり     菊竹典祥


 青蜜柑のつやつやとした表皮。段々と実を太らせる様子は生命力豊かだ。

 風に揺れる蜜柑をまるでみりみりと実る力に揺れているようだと描かれた。

 実りを実感し喜んでいる。逞しい。



   独り居の指差し確認蚯蚓鳴く     古舘千世


 独り住まいでは、夜休む前、点検、戸締り、消灯と確認事項が多々あろう。

 ひとつひとつ指差し確認をされている。

「蚯蚓鳴く」は秋の夜、土の方からジーとしたような音が聴こえること。

 本当は螻蛄の声らしいがこれを発音器官のない蚯蚓の鳴き声としたのだ。

空想的なロマン溢れる季語により、現実生活を笑いとばし楽しんでおられる様子が伝わる。



   夕立の過ぎたるあとの匂ひかな     熊倉和茶


 夕立は夏の蒸し暑い午後、積乱雲が降らせる雨。急に大粒な雨が降り出す。

 すぐに雨は上がりその後すっかり涼しくなる。

 街では街路樹の木々、アスフアルト、建物が水に洗われ別世界のよう。

 山では木々や草が匂い立つ。雨が降る前と気配が一変する。その転換を語られた。



   尻振つて横々歩く鴉の子     石原虹子


 市街地では、鴉は疎まれる身近な鳥だ。だが親子の情愛深く番で子育てをするという。

 知能が高く社会性もある。

 鴉の子は大柄な割には声や仕草が幼く人懐っこい。

掲句では丸い尻を振って跳ねるように横歩きを繰り返す様を楽しげに描いた。臨場感溢れる。

親鳥も上空で見守っているのかもしれない。



   鱧さうめんせつかくやから竹の箸     柴田博祥


 鱧は六月下旬からの一ケ月あまりが旬とされ、関西で賞味される。

 鱧そうめんを検索してみた。鱧そうめんは鱧のすり身を心太状に突き出した物。

 鴨川の床や貴船の川床料理に出てくるという。ふむふむ、さっぱりと誠に美味しそうだ。

京言葉がはんなりと効果的。竹の箸を添え完璧に涼しそうだ。



   足首のまぶしきことよ夏落葉     川井さとみ


 少女たちは薄着となり、しなやかな足首が良く目立つ。

 溌剌とした若さがまぶしく映える。初夏、常緑樹は新しい葉ができると徐々に葉を落としてゆく。

夏落葉は秋の落葉と違い色鮮やかではないが、樹木の成長の証である。



   揚羽蝶ホースの水を潜りけり     新井芙美


 大形で色鮮やかな揚羽蝶。掲句は夏の日差しを受けホースの水を掻い潜っていく揚羽蝶を描かれた。

撒かれる水を潜り、身を翻し、しなやかに飛び抜けて行く揚羽蝶。日差しの中ホースの水はきらきらと輝く。



   ののののとこごみは芽吹く太古から     泉 いづ


 こごみはわらびやぜんまいと並ぶ春を告げる山菜。美味しく食べられる草蘇鉄の若芽だ

 形は平仮名の「の」の字状でユーモラスだ。化石の中にも存在したというシダ植物の仲間。

 太古から人の身近にあった植物なのだ。

掲句はまず、上五の「ののののと」の「の」の連続に目を奪われて楽しい。

さらに句中の半分をオ母音が占め軽やかだ。

内容豊かに目にも耳にも新鮮。覚えやすく、いつの間にか口遊んでしまう。

  


by masakokusa | 2018-11-29 00:42 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年11月)                  草深昌子抄出

「棒」(代表 青山丈)201811創刊号

   呼ばはれし子の振り向いて子供の日     青山丈

   尺蠖が動いて影がうごめいて        大崎紀夫

   夏至の夜の空の裂け目の赤い星       西池冬扇



「八千草」(主宰 山元志津香)№88

   凭れ観る一樹の湿り夏神楽     山元志津香

   小判草そよぎ昼酒さめやらぬ    横山博行



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「雲取」(主宰 鈴木太郎)№255

   鶏頭に人をへだてる光かな     鈴木太郎

   存問の文を三通きりぎりす     下條杜志子



「唐変木」(代表 菊田一平)№17

   ストーブの火を細々と暦売     菊田一平

   よく晴れてテラスにソーダ水二つ  大和田アルミ



「詩あきんど」(主宰 二上貴夫)№33

   鰯雲あれは北方領土かな       二上貴夫

   昭和には草笛鳴らす兄のゐて     中澤柚果


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「ランブル」(主宰 上田日差子)№249

   子規の忌や走りの柿の大きこと     上田日差子

   桃の実や抱かるるための赤ん坊     川島ちえり



『俳句の水脈を求めて』平成に逝った俳人たち

              著者 角谷昌子(角川書店発行)


   昭和を生き、平成に逝った26俳人の作品と境涯。

   彼らはどのように俳句に向き合い、何を俳句に託したのか。

   そのひたむきで多様な生と、魂の表現としての俳句の水脈を探る。

    1 時代を拓いた俳人たち

飯島晴子・川崎展宏・藤田湘子・佐藤鬼房・永田耕衣・桂信子

三橋敏雄・森澄雄・飯田龍太ほか12

   Ⅱ 時代を映した俳人たち

    草間時彦・中村苑子・橋閒石・細見綾子・村越化石・鈴木真砂女

    摂津幸彦・田中裕明・金子兜太他14


 ―  飯島晴子は「水原秋桜子の意義」を著して秋桜子の陥穽を挙げ、俳句界におよぼした問題点を突くのである。高濱虚子が危惧したように、何の計らいもない高野素十と比較すると、俳句を作る以前に自分の理想に合わせた予定がある。予定があれば創作の限界があり、述べたい意図が俳句に表れてしまう。晴子はこの「述べる」という志向が秋桜子や人間探究派を通じて俳句界に蔓延し、俳句が停滞している元凶になったと指摘する。―


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「松の花」(主宰 松尾隆信)№251

   夕凪のひんがしひくく火星あり     松尾隆信

   波乱などなきかに米寿爽やかに     横山節子



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)№764

   舞殿のその真後ろの穴惑ひ     鈴木八洲彦

   手つかずの和綴じの冊子涼新た   菊地幸子



「鳳」(主宰 浅井陽子)26

   放牧の牛立ち上がる黍嵐        浅井陽子

   風渡るところが空よ滝仰ぐ       森山久代



「大阪俳人クラブ会報」(発行人 茨木和生)№

159

   追悼・鷲谷七菜子先生      瀬山一英


   滝となる前のしづけさ藤映す    鷲谷七菜子

   行き過ぎて胸の地蔵会明りかな

   水のあるところ靄たち近松忌

   ともしびを数へてあとは露の山

   道一つ村を出てゆく端午かな

   寒月のいつのぼりゐし高さかな



「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№260

   秋渇き残生戸惑ふこと少な     山本つぼみ

   雁渡し鼻先ひかる鬼瓦       芝岡友衛



「星雲」(主宰 鳥井保和)第46

   浦祭路地の提灯肩に触る     鳥井保和

   目つぶりて長き睫毛や聖五月   小川望光子


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『潤』茨木和生第14句集(邑書林)

   片付けの後に酒出て地蔵盆     茨木和生

   山人の仰山な荷に山の芋

   蛇穴に入りて日和の続きたる

   雉の声棺の妻に聞かせけり

   妻と来しことのある野に青き踏む



「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№39

   山霧や先行く人に追ひつけず     橋本石火

   曼珠沙華電車の椅子の向きを変ふ   中田 凛



「晶」(代表 長嶺千晶)№26

   単線ホーム蠅取草に花ひとつ     長嶺千晶

   亡きあとのこと子に伝へ盆用意    一柳はるみ



「玉梓」(主宰 名村早智子)通巻78

   蝉時雨陰も日向もなかりけり      名村早智子

   目をつむり筧に打たす汗の顔      八嶋昭男


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秋草」(主宰 山口昭男)№107

   にぎはしき人らかたまり秋の水      山口昭男

   台風や抱けば小さき犬となり       野名紅里



「獅林」(主宰 的場秀恭)№974

   電柱の芯まで届く油照          的場秀恭

   水ばかり飲んでおれるか熱中症      金子和子


by masakokusa | 2018-11-02 14:16 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年10月)                  草深昌子抄出


『寒紅梅』山本洋子第七句集(角川俳句叢書)

   山道に潮鳴りをきく翁の忌      山本洋子

   おくれきし人のまとひし落花かな

   雛壇の端に眼鏡を置きにけり

   お祝を言ふ囀の木の下で

   木槿咲くところを家のうらといふ

   八朔や住吉に来て潮匂ふ



「雲取」(主宰 鈴木太郎)№254

   棉の桃囃してわれらただよへる      鈴木太郎

   八朔や真潮の島へ墓訪ひに        下條杜志子



「都市」(主宰 中西夕紀)通巻65

   演能もきのふとなりし蛾を掃けり     中西夕紀

   ころもがへ袖から風がぬけてゆく     城中 良



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「群星」(代表 藤埜まさ志)№177

   蝉声のなかのひぐらし草田男忌    藤埜まさ志

   急ぐ毛虫一本の毛も休むなく     博沼清子



「ランブル」(主宰 上田日差子)№248

   大花野仰ぐはちぎれ雲ばかり     上田日差子

   追はれても追はれても稲雀かな    大庭星樹



「朴の花」(主宰 長島衣伊子)第104

   平らかな岩の瀬音や鳳蝶      長島衣伊子

   乙女らに囲まれてゐる夏期講座   矢島康吉



「里」(主宰 島田牙城)№187

   秋爽の入江深きに白き浜       島田牙城

   大型テレビ動かすことも盆支度    仲寒蝉


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『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』岸本尚毅・夏井いつき


  はじめに      夏井いつき


 岸本尚毅さんは、私より数歳年下にもかかわらず、古今東西の俳句が立ちどころに出てくる恐るべき記憶力、

 評論・論評における鋭く深い分析力に舌を巻くばかり。

 作品は勿論のこと、彼が書いたものはとにかく手に入れて、読んで、己の勉強とすることを繰り返してきました。

 キシモト博士が俳句界をリードしてきたこの30年間、私自身は「俳句の種まき」運動を続けてきました。

俳句にちょっと興味を持ち始めているいる人たちを勝手に「チーム裾野」と名付け、コツコツ俳句の種をまき続けてきました。

 本書では、私は徹底して「チーム裾野」の代弁者となって、キシモト博士に疑問をぶつけました。

 キシモト博士との「講師問答」は、実に興味深く、学ぶって楽しい!を満喫した時間でした。



  この本の読み方・使い方   

 

 岸本尚毅

  ―俳句に精神論は無用。徹底的に「型」を学び、「発想法」を練習する


 おしまいに―

  キシモト博士が肝に銘じている三つのこと


 (平成30年9月10日初版第一刷発行  祥伝社





「松の花」(主宰 松尾隆信)250号記念号

   七月一日雨垂れへあるきだす     松尾隆信

   俎板に明石の章魚の足二本      渡辺絹江




「古志青年部作品集」2018  第七号 (石塚直子編集)

   ほのぼのと田舎の春やボーリング     西村麒麟

   我もまたいぶされてゐる蚊遣かな     辻奈央子



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「里」(代表 島田牙城)№18

   寝つかざる子を負ふ一人橋涼み      中村与謝男

   戦争で逝きたる人へ秋立ちぬ       島田牙城



「梓」(代表 上野一孝)第32

   凌霄花をりをり見てやもの書ける     上野一孝

   こころづく空にあをすぢあげはかな    堀本裕樹



「ににん」(代表 岩淵喜代子)№72

   流されてゆく形代の袖ひらく      岩淵喜代子

   霧を生み霧の模様の延暦寺       川村研治



 ふたり句集

 『守宮&燕の子』 えのもとゆみ・榎本享


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    おたまじゃくし既に蛙の目でありぬ    えのもとゆみ

   ころころと蜷のゐてまだ道のなし

   挿木する頭の中は釣りのこと

   ゑのころや火星左で土星右

   黒ずみしバナナ一本火恋し



   青虫が大きすぎるよ雀の子         榎本 享

   牡蠣の殻こする束子はそれぢやない

   目の前に偏平足の素足かな

   男厨房に天麩羅の藷つまむ

   おんぶしてもらへぬはうの飛蝗かな



 岸本の選にもとづいて編まれた句集。

 しかも「特選句」のみ。否応なく岸本の選が試される。

 爽波なら、裕明ならどんな句を採っただろうかと自問しても詮方ない。

 享さんと孝行嫁のゆみさんと、

岸本選の合計二名プラスαの俳力で出来た句集である。

どうか読んでください。 ―――岸本尚毅




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「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№38

   滝壺の滝の余勢をなだめけり      橋本石火

   朝のパン真黒こげや初嵐        三谷史子



「秋草」(主宰 山口昭男)№106

   秋の蝶脚やはらかくからみあふ       山口昭男

   草むしる幹の向うへ手を回し        木村定生


   

「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№259

   夭折の戦八月の海を悼む        山本つぼみ

   署名簿にハングル文字や広島夏     小沢真弓


by masakokusa | 2018-10-13 23:55 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年9月)                  草深昌子抄出



   

「獅林」(主宰 的場秀恭)№973

   出目金の日がな一と日や身を揺すり     的場秀恭

   大文字前田先生誕生日           森一心



「なんぢや」(代表 榎本享)№42

   木槿落つ朝寝の魚をおびやかし     西野文代

   眼の涼し言葉のきつぱりと涼し     榎本享


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「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)№763

   沓脱ぎにひかる雨粒今朝の秋        鈴木八洲彦

   夏あざみ咲くよと見るやすぐ其処に     小岩よし子



「静かな場所」(代表 対中いずみ)№21

   円卓の蟻二周目に入りけり      対中いずみ

   転びたるとき冬空の白さかな     森賀まり



「雲取」(主宰 鈴木太郎)№253

   雨ついて親火に走る大文字      鈴木太郎

   森閑と山繭二つ夜の明ける      下條杜志子




『海紅豆』川崎慶子句集 第三句集(東京四季出版)

   狛江てふ町の狛犬風光る      川崎慶子

   北回帰線で降られて海紅豆

   夏燕一閃鉄砲伝来地

   島裏にまだ髭の無き浦島草

   はるか来し霧のロンドンやはり霧



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「ランブル」(主宰 上田日差子)№247

   水脱いで琥珀光りに神の蛇       上田日差子

   まぎれなき九十一歳更衣        小池照江




『初鏡』奥井志津 第二句集(文學の森)

   石蹴りの影も跳びたる遅日かな     奥井志津

   佳き死とは佳き生ならむ梅真白

   遠き子へ投函夜の鰯雲

   慶びの悲しびの皺初鏡

   けふ殊に己れの見ゆる寒さかな


   

「はるもにあ」(主宰 満田春日)№70

   卓袱台の脚を起こして芒種かな        満田春日

   汗のシャツ皮はぐやうに脱ぎにけり     番匠博雄


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「松の花」(主宰 松尾隆信)№249

     菅浦

   夏木立里入口の四足門       松尾隆信

   筍の高きに枝の開きけり      小山五十三




「木の中」(主宰 折井紀衣)№109

   古希じゅんじゅんと片陰をゆくやうに     折井紀衣

   蒲の穂に歩まば風の通るなり         寺田達雄



『水瓶』対中いずみ句集 ・ 第三句集(ふらんす堂)

   浅春の岸辺は龍の匂ひせる

   雨垂は壁にさはらず沈丁花

   半裂の手の握らるることのなく

   着信の青き光やみづすまし

   思ふより熱き兎を抱きにけり



「秋草」(主宰 山口昭男)№105

   国原の欹つ夏となりにけり        山口昭男

   手花火の明るさを褒め合ひにけり     野名紅里



「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№258

   沖縄忌胸に食入る少女の詩      山本つぼみ

   滑空の態で飛魚揚げらるる      小沢真弓



「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№37

   梅干して印鑑供養受付中       橋本石火  

   音もなく夫の忌がくる十三夜     松本貞子



「星雲」(主宰 鳥井保和)№45

   焼けるほど鮎美しき化粧塩      鳥井保和

   田水張り一際広き家郷かな      園部知宏



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「玉梓」(主宰 名村早智子)№77

   祭済むころには笛の名手かな      名村早智子

   立ち上ることが休憩草を引く      八嶋昭男



「晨」(代表 山本洋子)第207

   鶯の去なんとすれば啼きつのり      山本洋子

   萱草の花に田水のあふれけり       中村雅樹

   濁流が樹々の間に見え合歓の花      茨木和生

   遥かまで小川一筋涼しけれ        田島和生

   一燭の涼しさにゐる忌日かな       ながさく清江

   不機嫌な虚子を涼しと思ひけり      中杉隆世

   桑の実を手に改札を通りけり       浅井陽子

   吊り余る玉葱は土間湿りかな       岩城久治

   その中のぐいぐいのぼりゆく蛍      辻惠美子

   水無月の夕べは白き石舞台        山中多美子    


by masakokusa | 2018-09-30 23:19 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年8月)                  草深昌子抄出


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「獅林」(主宰 的場秀恭)№972

   真つ直ぐの風に瞑り袋角     的場秀恭

   父母のをらぬ故郷朝の虹     梶谷予人



「雲取」(主宰 鈴木太郎)№252

   気負ひ来てこの麦飯の坊泊り     鈴木太郎

   母の日のていねいに抜く魚の骨    下條杜志子




「八千草」(主宰 山元志津香)№87

   荒梅雨へ突つ込むロマンスカー真つ赤      山元志津香

   腥(なまぐさ)き戦場の詩に梅香る       横山博行




『力石を詠む』第四集    高島慎助(四日市大学教授)

               山口友子(三重県書道連盟理事)


   かつて男達が力を競った力石。

   その力石に想いを込めて詠まれたものである。

   俳句、短歌、川柳、狂歌など280作をまとめた。


   陽炎や土に埋もる力石         正岡子規

   炎天の「卯之助石」の熱きかな     高島慎助

   黄落の海にぷかりと力石        酒井一止

   力石どすんと寒の来てゐたり      松永浮堂

   青葉寺二つ据ゑたる力石        草深昌子



   

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WEP俳句通信』№105

   老鶯を画眉鳥まぜつかへしたる     本井 英

   散りぢりの雲の安らや草茂る      瀧澤和治

   またたびの白うらがへるみなみかぜ   井上康明


   

『冬の雲』小堀紀子句集 第二句集

   消ゆる雲ありながら湧く冬の雲     小堀紀子

   虚子の忌や休むことなく海うごき      

   これほどの嵐にしづか紅椿         

   奢莪咲いて仏事の靴の黒びかり       

   恋の猫ひと来ぬ坂と知つてをり




「都市」(主宰 中西夕紀)№64

   青大将と逃げも隠れもせぬ我と     中西夕紀

   梅林のかをりのうごく風がくる     城中 良      



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「詩あきんど」(主宰 二上貴夫)第32

   峰雲に不二は日本一の山      二上貴夫

   引き潮に足を踏ん張る立夏かな   佐野恋蔵



「ふらんす堂通信」№157

   受賞特集

   33回詩歌文学館賞受賞   岩淵喜代子句集『穀象』

   第9回田中裕明賞受賞    小野あらた句集『豪』

   こわい俳句(新連載)     宇多喜代子

   現代俳句ノート        高柳克弘

   虚子研究レポート       岸本尚毅

   BLな俳句          関悦史

   新刊紹介 

富安風生『愛は一如』・後藤比奈夫『俳句初学作法』

大島史洋『斎藤茂吉の百首』・シリーズ自句自解『ベスト100山本洋子』

草深昌子『金剛』他



「鳳」(主宰 浅井陽子)№25

   箱庭を目のゆつくりと過りゆく     浅井陽子

   色消えてなほ存ふるしやぼん玉     貞許泰治



「松の花」(主宰 松尾隆信)№248

   夏めくや風をはらめるすべての帆     松尾隆信

   余生とは筍飯のおこげかな        横山節子


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『るん』辻村麻乃句集 第二句集

   出会ふ度影を濃くする桜かな     辻村麻乃

   夜学校「誰だ!」と壁に大きな字     〃

   森閑と海の岩屋に夏日さす        〃

   出目金も和金も同じ人が買ふ       〃

   生身魂見舞うて直ぐに叱られて      〃



「里」(主宰 島田牙城)№185

   ともがらに明と暗あり溽し      島田牙城

   夏の月塩蔵和布掴み出す       上田信治

   金扇にあらく塗りたる朱なりけり   堀下 翔



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)第762

   水鶏笛またも足腰揉みをれば      鈴木八洲彦

   有り体にもの言ふだけや籠枕        〃

     病床吟 

   目覚めては脈とる癖や五月晴      故・伊藤胡風子(90歳)

   信号機青となる今日子供の日        〃



「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№36

   遅れ来てどかと座りぬ業平忌      橋本石火

   軽鴨の子や潜りてはすぐ顔を出す    池森はる子



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「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)257

   落す水なくて水車に夏の霧      山本つぼみ

   老鶯やまほらに畝傍山低し      小沢真弓


by masakokusa | 2018-08-31 23:06 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年7月)                  草深昌子抄出



「浮野」(主宰 落合水尾)第490

   身に触れて去りゆく音を滝といふ     落合水尾

   動かざることに徹して墓碑灼くる     龍野 龍



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「家」(代表 加藤かな文)第202

   東京のやうな一画明易し      加藤かな文

   夏めくや川越ゆる石二つ三つ    晏梛みや子




『相互批評の試み』岸本尚毅・宇井十間 (ふらんす堂)


   俳句の即物性について

   日常性について

   重くれと軽み

   多言語化する俳句

   叙情と劇の間

   一様性から多様性へ

 

  往復書簡という形は両者の関心や視点や見解の相違を露わにする。

  相手の思考を確認しながら論を組み立てる過程を読者に示すことにより、

  読者が、「宇井と岸本はあんなこと書いているが、自分ならこう考える」と思ったとすれば、本連載は十分に有益だったと思う。

(岸本尚毅)


  良い俳句作品は、それに見合うような良い読手を必要とする。良い読手が育つためには、読み手の言葉もまた評価されるような文化が必要である。

そもそも、一般に作品を批評するということは誰かと対話をするということではなかったか。

  (宇井十間)





「秋草」(主宰 山口昭男)第104

   裏の戸につつかひ棒や栗の花     山口昭男

   夕飯よけふは昼寝をせぬままに    木村定生


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「獅林」(主宰 的場秀恭)№971

   雨蛙のぞけば草に成り済ます     的場秀恭

   舌を焼く熱きスープも夏料理     松島圭伍


  田中康雄様を悼む・主宰と18名の会員の方々の追悼文集

     新樹眩し癌克服を告げられて     田中康雄

     琉金や水中に風あるごとく        〃

     盃は小さめが良し蕪蒸し         〃




『管制塔』内田茂句集    序・大島雄作 跋・ふけとしこ

   星飛んで管制塔に人の影

   狂言のやうに人逝く寒の内

   前を向く子規の写真やあたたかし

   半ばから扇の止まる話かな

   ロボットの声は少年冬ぬくし




「晶」(代表 長嶺千晶)創刊6周年記念号

    葦の間を沐浴の子等泣きたつる     長嶺千晶

    うつうつと雨の土曜日葱坊主      木村かつみ


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「雲取」(主宰 鈴木太郎)№251

   鳶の輪のいつしか消えて釣荵     鈴木太郎

   花冷や指もて蓼太句碑を読み     下條杜志子



「舞」(主宰 山西雅子)№90 夏季特別号

    明日葉の雄々しき丈や雨の島       山西雅子

    なんとなく蜘蛛といつしよに待ちかまへ  小川楓子



「里」(代表 島田牙城)№184

   木の裏の木が見えてゐる大南風      島田牙城

   十薬や崩れはあれど穴太積み       中村与謝男



「澤」(主宰 小澤實)通巻220

   新緑や吊橋を吹き上がる風       小澤 實

   瓜割つて種掻きだすや瓜たてて     川上弘美



「梓」(主宰 上野一孝)第31

   春泥を来てかつぽれを習ひをる     上野一孝

   行き先は夫婦べつべつ水温む      水野晶子


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「松の花」(主宰 松尾隆信)通巻245

   湘南の沖に大島揚雲雀         松尾隆信

   コクリコや晶子百花の屏風の書     中村光世



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)第761

   わらわらとゲラ受け取りし薔薇の門     鈴木八洲彦

   ライラック独りの夜はリラと呼ぶ      菊地たつ子



「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№35

   夏服や顔一つ分高き人       橋本石火

   今着きし船や鳥貝提げ来たる    山中 綾



「星雲」(主宰 鳥井保和)第44

   茶畑の畝に一本今年竹        鳥井保和

   人はみな天守へ向かふ花の昼     園部知宏



「ににん」(代表 岩淵喜代子)№71

   巣立鳥真昼は家の中暗し      岩淵喜代子

   滴りの道を大きな甕として     服部さやか



「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)256

   師との旅ありしを遠く花サビタ     山本つぼみ

   蚊喰鳥空にでこぼこある如く      芝岡友衛


by masakokusa | 2018-07-31 22:48 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年6月)                  草深昌子抄出

「玉梓」(主宰 名村早智子)№76

   校門の桜一番大きな木       名村早智子

   本日はここが基地なり花筵     房安栄子



「秋草」(主宰 山口昭男)№103

   しばらくは草笛のため恋のため      山口昭男

   塗りたての畦の匂ひにぶつかりぬ     石崎圭太



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「群星」(代表 藤埜まさ志)奈良文夫先生追悼特集号 176号

   聖塔は離りて仰ぐ春曇り       藤埜まさ志

   待つててと母追ふ小橋水温む     奈良比佐子


   

「獅林」(主宰 的場秀恭)№970

   柏餅仕上げは母のひとひねり     的場秀恭

   夏帽子とりて峠の風かぶる      田渕豊久



朴の花」(主宰 長島衣伊子)103

   ひろびろと波の引きゆく啄木忌     長島衣伊子

   ぼろ市の風に吹かるる長襦袢      矢島康吉



「巴美野」(代表 坂田恵美子)創刊号

   火の山の裾野を走る水の秋       坂田恵美子

   夢殿の雫となりし春の雪        青木英二


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「雲取」(主宰 鈴木太郎)

   はためける雲に日の暈夏つばめ     鈴木太郎

   筋力は舌の先にも揚雲雀        鈴木多江子



「なんぢや」(代表 榎本享)

   紙やすり巣箱の口を丹念に     榎本享

   姫女苑工事現場の今日静か     えのもとゆみ



「都市」(主宰 中西夕紀)

   切株に坐れば斜め鳥帰る      中西夕紀

   盆梅や末座にどつと笑ひ声     大矢知順子



「松の花」(主宰 松尾隆信)

   三月の利休鼠の空がある        松尾隆信

   砲丸投げの玉ころころとあたたかし   中丸しげこ


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「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)

   字の名の古ぶ木の橋花薺      山本つぼみ

   和布干す沖の白帆の余り風     柴岡友衛



「里」(主宰 島田牙城)

   薔薇見酒とてもさかしらなる猫よ     島田牙城

   大足の下駄鬻ぎあり春祭         堀下翔



by masakokusa | 2018-06-29 18:28 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年5月)                  草深昌子抄出

「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)

   老うもよき茅花ながしとなりにけり     鈴木八洲彦

   ひしめける蕾の中の初桜          加藤ひさ子


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「運河」(主宰 茨木和生)

   野に遊ばむ命生き切りたる妻と     茨木和生

   雉鳴けり妻の棺を持ちをれば       〃

   夕空に燃えうつりたる野焼の火     谷口智行



「秋草」(主宰 山口昭男)

   約束の人立つていゐる春の雨     山口昭男

   薄氷と水のさかひの滲みかな     石崎圭太



「ハンザキ」(主宰 橋本石火)

   鯖缶に鯖の絵春の日が西に     橋本石火

   桜鯛旨し屋島は遙かなり      宮田真子



『菅美緒』シリーズ自句自解Ⅱベスト100

   近州の飯の旨さよ鮴もあり      菅美緒

   ひと雨の過ぎたる処暑の比叡山   

   若鮎を火にのせ近江ことばかな

   鮒釣るや餌何やかや雪に置き

   八月や草色のもの草を跳び



「獅林」(主宰 的場秀恭)

   蟻いつも急きて遊びの貌見せず     的場秀恭

   堰落ちて組み直しけり花筏       あめ・みちを


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『鳥の手紙』白石喜久子 第二句集

   祈る手のやがて木の実を拾ひけり     白石喜久子

   巣箱かけ鳥の手紙を待つ子かな

   出雲まで続いてゐたる花の雲

   箱庭の働く人に雨上がる

   丈草の舟出のあたり草の花



「雲取」(主宰 鈴木太郎)

   神代の白雲となる大桜     鈴木太郎

   眼間を禰宜の袴と初蝶と    下條杜志子



『球殻』花谷清句集 第二句集

   春の雪想うは思い出せぬこと     花谷清

   しやぼん玉ひとつふたつは風を蹴り

   ビー玉の影は黄みどり鳥雲に

   百合一輪フエンスに茎と隔たれて

   花屑の轢かれ鵯色蘇る



「八千草」(主宰 山元志津香)

   昭和遠く平成速し据り鯛     山元志津香

   ペンキ塗る足場が取れて十二月  横川博行



「詩あきんど」(主宰 二上貴夫)

   裸木をつかむ老者の手もあらむ     二上貴夫

   陽炎に乗る子のいない三輪車      中尾美琳



「はるもにあ」(主宰 満田春日)

   光りつつ色失へる春の海      満田春日

   竹馬の上で降り方考へる      山崎杏


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「松の花」(主宰 松尾隆信)

   妻戻り来たるよ豆を撒くとせむ     松尾隆信

   鬼は外いつよりか声張らざりし     佐藤公子



『時空の座』拾遺・エッセー集    西池冬扇


  私の頭の中にはたくさんの人が時空を超えて住んでいる。

  それらの人々に時どき出てきて貰って架空の座談会を行う。

  称して時空の座という。

  時空の座がある限り人間は肉体を離れて存在することができる、などと不遜なことを言えば嘘っぱちだ。でも、そういって人に勧めたいくらい時空の座は楽しい。

                   ―「あとがき」より抜粋

  里山のあのあたりから祭り笛     西池冬扇

  行く秋の触れて冷たきモラエス像    〃

  モラエス像撫ぜる双子の遍路笠     〃


  

『冠羽』 仲原山帰来句集

  こでまりや雨くる多摩の坂がかり      仲原山帰来

  文京は槐の花の散るところ

  木枯や夕空へ飛ぶ葉のあまた

  日脚伸ぶ酒匂河口の波がしら

  塗り深き大山独楽を土産とす



「里」(代表 島田牙城)

  罐集めゆくがたつきの黄沙かな     島田牙城

  髪留は髪にしめりて卒業期       堀下翔




『雨奇』 前田攝子句集

  酒の粕かかへて雨の本堅田      前田攝子

  濡らしてはならぬ謄本春みぞれ

  山桜朝のひかりを温めをり

  梨咲いて介護ベッドの運ばれ来

  ほととぎす天王山の雨呼びぬ



  

  

  


by masakokusa | 2018-05-31 19:59 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年4月)                  草深昌子抄出

「ハンザキ」(主宰 橋本石火)

   菓子折に雛乗せあり菓子司     橋本石火

   梅の寺天女は軽き沓を履く     渡辺みえ子



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)

   妻留守の宵の春雪降りにふる     鈴木八洲彦

   春一番物置小屋の戸が外れ      小岩よし子



『富士山麓・晩年』(続・佐々木敏光句集)

   晩年や前途洋洋大枯野     佐々木敏光

   裏山を森へなだるる霧の塊

   わが森はわが大宇宙冬籠

   郭公や芭蕉の道も下校時

   富士ひとつ月のひとつの良夜かな




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「星雲」(主宰 鳥井保和)

   あおあおと高野八峰雪月夜     鳥井保和

   緩やかな風が解きぬ春霞      竹内正興



「大阪俳人クラブ」(発行人 茨木和生)

   獺祭無人カメラの作動中      山内繭彦

   朝日さす海に声湧き鴨帰る     野村朴人



「群星」(代表 藤埜まさ志)

   吾妻橋船と潜れる都鳥       奈良比佐子

   注連飾る艦の真中の大神棚     藤埜まさ志



「秋草」(主宰 山口昭男)

   孟宗の古き青色雪ふりつむ        山口昭男

    ポケットや手袋出せばティシュ落ち    木村定生


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「玉梓」(主宰 名村早智子)

   蜷の道蜷の帰つて来ない道      名村早智子

   ことごとく木に巣箱ある小学校    井上惠美子


   

「晶」(主宰 長嶺千晶)

   庭の松見えず吹雪の真横より     長嶺千晶

     浅間山仰ぐにマスク外しけり     寺島民子



「獅林」(主宰 的場秀恭)

   朧夜の静けさに人通りけり     的場秀恭

   紙皿が似合ふ天麩羅蕗の薹     小原 勝



「鳳」(主宰 浅井陽子)

   薄氷を回して鳥の立ちにけり     浅井陽子

   大寒やズボン一本買ひ足しぬ     前尾五月男


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「都市」(主宰 中西夕紀)

   風邪抜けの喉にうれしき蕎麦の冷え     中西夕紀

   さざん花へ身を投げ入れる鳥のこゑ     城中 良



「雲取」(主宰 鈴木太郎)

   花種の日を吸ふ力しづかなり     鈴木太郎

   船頭の耳揉んでゐる夕焚火      鈴木多江子



「里」(代表 島田牙城)

   坂道に風の和したる桜かな     堀下翔

   和紙切つて旧正月の作りもの    中村与謝男



「泉」(主宰 藤本美和子)

   ねむごろに掃く白梅の影の内     藤本美和子

   花の名の漢方薬や二月来る      きちせあや


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「松の花」(主宰 松尾隆信)

   初日いまだし天上はすでに青     松尾隆信

   爽やかに連山とぎれなかりけり    荒井寿一



「ににん」(代表 岩淵喜代子)

   春月の一回りして同じ位置       服部さやか

   地吹雪や二歩先にらむ足の位置     栗原良子



「俳句饗宴」(主宰 鈴木八洲彦)

   春の鹿起てども人を見るでなく     鈴木八洲彦

   寒雁の声なす沼の底ひより       星 節子



「梓」(主宰 上野一孝)

   盆の松入れ一族の初写真       上野一孝

   いま何か言ひし貌なりいぼむしり   出口紀子


by masakokusa | 2018-05-01 23:59 | 受贈書誌より | Comments(0)