昌子365日(自平成30年2月1日~至2月28日)
      2月21日(水)       棒切れをもつて幹打つ余寒かな

      2月20日(火)       酒蔵の匂ひしてゐる竹の秋

f0118324_21403142.jpg

       2月19日(月)      松林に日のあまねかり南国忌

       2月18日(日)      白雲の行き行く春の酒匂川(さかわがは)

       2月17日(土)      春めける風のひと渦巻きにけり

       2月16日(金)      山高く川細くあり涅槃西風

       2月15日(木)      総会の拍手いくたび梅ひらく

           
f0118324_21333152.jpg

       2月14日(水)      みづうみのどこもさざなみ冴返る

       2月13日(火)      乳牛の眼と会ふ春の寒さかな

       2月12日(月)      石に乗り岩に廻りて水温む
 
       2月11日(日)      下萌に寝かせて長き熊手かな

       2月10日(土)      降り出して小糠雨とも春の雪
f0118324_20234922.jpg

       2月9日(金)      蕗味噌にたてがみ遠く見てゐたり

       2月8日(木)      仰ぎ見て鳶美しき雪間かな

       2月7日(水)      二人子を遊ばせてゐる芹の水

       2月6日(火)      御僧にさしかく春の時雨傘

       2月5日(月)      立春の居間は二階でありにけり
f0118324_00141912.jpg

       2月4日(日)      豆撒のさすが左腕の投手かな

       2月3日(土)      蕭条のきはみの豆を囃しけり

       2月2日(金)      往き来して雪の廊下やただ一人

       2月1日(木)      額(ぬか)に指あててそのまま雪の夜

# by masakokusa | 2018-03-03 23:59 | 昌子365日 new! | Comments(0)
『青草』・『カルチャー』選後に・平成30年1月       草深昌子選

f0118324_21371081.jpg

   宝船漕ぎ出す古希の櫂をもて    神崎ひで子


 室町時代ごろから、初夢に良き夢を見んとして、宝船の図を敷いて寝る風習があった。この宝船の図には、


なかきよのとをのねふりのみなめさめなみのりふねのをとのよきかな

(永き世の遠の眠りのみな目覚め波乗り船の音の良きかな)


という回文歌が添えられている。

私も昨年、京都は下賀茂神社の本家本元の「宝船」を送っていただいた。

そこには七福神はもとより金銀、珊瑚、宝石、米俵など、見るからに目出度いものが山積されていて、嬉しかったことを覚えているが、果たして夢はどうであったのか、ぼんやりしている。

ひで子さんは、ぼんやりなんぞしていない。宝船を枕に敷いて、心は颯爽と前途ある大海原へ漕ぎ出されたのである。

 「コギダス」「コキ」の、「コ」の畳みかけが櫂のリズムとなって心地よい。

まことに輝かしい本年のスタートである。



 

   去年よりは少し賢く読始      田野草子


新年に入って、初めて書物を読むことが読初(よみぞめ)、読始(よみはじめ)である。

草子さんもまた、なんと素晴らしい今年を歩み始められたことであろうか。

この句を読むと、一読にして、我もまた少し賢くなったような元気がもらえるではないか。

きっと少々難しい書物であろう。いや平明にして奥深いものと言った方がいいかもしれない。あるいは手元にある愛読書を改めて読始に選ばれたものかもしれない。

いずれにしても、去年までは、なかなかすんなり読めなかったものが、何と今年は心から頷かされるものになっているではないか。

本を読んで「わかる」ということほど嬉しいことはない、間違いなく自身の糧となっていることを感じ入るのである。

「賢く」という何気なくも、少しあらたまった言い方が、文字通り賢明である。




若水を供へなんども頭下げ      市川わこ


「若水」という兼題が出された時、私を含め大方の人は、難しい季語だと気構えた。聞き慣れない言葉に加え、神聖なる新年の水ということを考えると、イメージは特別なものに飛んでいくのである。

ところが、わこさんは何とも素直に身近なものとして、難なく若水を詠いあげた。

元旦に汲んで、心新しく神仏に供えた水であろう。

庶民のささやかな感謝と願い事の数々、まさに神仏に何度も頭を下げられたのであろう。

若水に対する、心の引きしまりは十二分に伝わってくる。



f0118324_21344533.jpg

元日のひろき額の顔洗ふ      坂田金太郎


何十年付き合ってきた我が顔のことは、若い時はともかく齢を積みかさねるほどにいちいち考えもしないのではないだろうか。

だが元旦の洗顔ばかりはちょっと厳粛である。ざぶざぶと濯ぎながらもわが額の広さをしみじみと慈しまれたのであろう。

新年の自覚というものが「ひろき額」にきれいさっぱりと出ていて、読者もまた清々しさをいただけるものである。

女性の美しい富士額でもあるかのようなめでたさも想像されたのであるが、何と男性。

作者にうかがえば、禿げあがってしまって額が広くなったのだという。

とんだ種明かしは聞かない方がよかった、と言いつつ、初笑をしたのであった。




   横浜港汽笛一声去年今年      東小薗まさ一


全てを漢字でもって仕上げた一句は見るほどに手堅い。

作者は故意に漢字を並べようとしたのではないだろう、韻律もスムーズであって、思わずこうなったというような一句である。

横浜港では大晦日の夜24時、除夜の鐘ならぬ汽笛が新年を迎えるお祝いとして鳴り渡るそうである。

まさに、時去り時来たるとう意味合いが、汽笛の音量となって響いてくる。

「去年今年」という新年の季語の置き方は出来るようで出来ない、素直な実感が効いている。



f0118324_21391549.jpg


悴める手に息かけて赤提灯       松尾まつを

 

 寒さに凍えそうなそのとき、行きずりの街角に、赤提灯を見つけたら、ふっと吸い寄せられてしまうのではないだろうか。

 男社会では、赤提灯はすでに居酒屋を指すのであろうが、男女を問わず一句が身に染み入るようにわかるのは、「赤提灯」という具体的なものの置き方が絶妙だからである。

色彩の赤もよければ、提灯の明かりも納得させられるのである。

「手に息かけて」からは、一呼吸おいて、ふと綻びた作者のまなざしまでもがうかがえる。




 病癒ゆるごとく日脚伸びにけり     森田ちとせ


 冬至が過ぎると畳の目の一つ一つほどに日が長くなることを実感する。

いや実感というよりは、「日脚伸ぶ」と言ったときに、自然界のささやかな春の兆しを見つけることで、厳寒の時期を精神的に凌いでいるのかもしれない。

 そんな「日脚伸ぶ」という季題に、この句はまた新しい境地を見せてくれた。

穏やかでありながら、「本当にそうだな」と思わせる表現の強さがある。

 作者がちとせさんと知れば、厄介な病気を抱え込んでいた作者自身のひそかにもじんわりとした感慨に違いない。




 病棟の渡り廊下や日脚伸ぶ      小幡月子


 渡り廊下は旅館などで見かける新館と旧館をつなぐ廊下であったり、本館から湯屋に渡されたものであったり、俳句にはよく使われる措辞ではあるが、この渡り廊下は病棟から病棟へ掛けられたものである、そこに先づ意外性がある。

この句からも、ふとしたあたたかさが、作者にとって救いのように感じられたのであろうことが、明るい日射しそのままに伝わってくる。

これが本当の「日脚伸ぶ」だなと、思わせるものがある。




能登鰈手袋の手で炙りけり      柴田博祥


 寒さをものともせず防寒着を着込んでの魚釣であろう。

能登という固有名詞がいかにも寒げで、いかにも美しい、それゆえに鰈もまた一段と弾けるような新鮮さを見せてくれる。

手ごたえ十分に釣りあげた鰈は、手袋の手のまま火にあぶって、ワンカップでも飲まれるのであろうか。

「手袋」の手の触感が喜びの臨場感さながらに伝わってくる。



f0118324_21400553.jpg


能登の女あかぎれなんかなんのその    熊倉和茶


能登鰈の能登もいいが、この句の能登もまた一句を大きく深く広げている。

旅をされた感想であろうが、旅人を越えてまるで常住の思いのように受け止めた、

能登の女性の心映えが「なんのその」という大胆なる措辞にきっぱりと出ている。

皸が少しも痛々しくなく、能登の女の勲章のようではないか。

作者自身にも能登の女性に通じる気概がなければこうは詠えないものである。




初手水赤子の小さき拳かな     大本華女


 初手水は元日の朝汲み上げられた若水で、その年初めての手水を使い、手や顔を洗うことを言う。

 この句はもちろん水道の水であろう、それでも立派な初手水である。

 赤ん坊の瑞々しさが、初手水に呼応しているのはもとより、赤ん坊がぎゅっと握り拳を見せているのが何より目出度いのである。


 

   若水に淹れて茶柱立ちにけり     小川文水

   若水に八十路の顔を映しけり     藤田若婆

   悴みて洗顔の水手より漏れ      米林ひろ

   選評は席を移して初句会       佐藤健成

   子等去りて正午の鐘の冴ゆること   末澤みわ

   人日や紅茶に落とすウイスキー    山森小径

   一人居て宝の如き寒満月       中野はつ江


f0118324_22211412.jpg

   悴むや花の蕾のやはらかな      鈴木一父

   河豚刺を青磁の皿に掬ひけり     二村結季

   初鏡横皴深くありにけり       中澤翔風

   変身の魔法かけたや初鏡       芳賀秀弥

   湧き出づる若水つとに泡となる    河野きなこ

   けふもまた光る星あり冬の朝     藤田トミ

   画像追ふ医師の背中や春浅し     関野瑛子


# by masakokusa | 2018-03-03 22:04 | 『青草』・『カルチャー』選後に | Comments(0)
『里』(島田牙城主宰)二千十八年2月号より・俳句鑑賞

あふみのしづくしらたましらずしてしたがふこひはいまこそまされ  万葉集巻第十一 柿本朝臣人麻呂之歌集出

近江に降りた真珠たち     中村与謝男


f0118324_20595503.jpg

大雨の宿りを室の花のもと     草深昌子 句集『金剛』



 室の花の室(むろ)はガラス張りの、或いはビニールハウスの様な温室のこと。こうした温室育ちの花が室の花。

 今は温室の設備や技術が発達し、季節に関係なく様々な花が出回るから、この場合は蘭などとも取れるが、そうではあるまい。

 作者は伝統派の方だから、この花は既に蕾をつけた草木を炉火を設えた室内に持ち込んで、開花を早めさせた花。

 伝統を意識して梅と考える。

 雨宿りさせてもらった廈(いえ)で炉火近くへと勧められ、梅を見たのだろう。

 座五の「もと」は、そのすぐそばの意だから、花の香もしているに違いない。

 冬の大雨に濡れた身に炉火はあたたかく、尚も降り続く雨音が聞こえる。

 能の「鉢木」では、雪中一夜を求めた旅僧(最明寺時頼)に、佐野源左衛門常世夫婦が栗飯を勧め、薪が無いからと秘蔵の鉢 

 木を燃やす。

 句も、作者への主の優しいもてなしの心根が伝わるようだ。

 


# by masakokusa | 2018-03-03 20:54 | 昌子作品の論評 | Comments(0)
草深昌子句集『金剛』・書評抄録(その7)


『大阪俳人クラブ会報』№156 


f0118324_21430248.jpg


書評

草深昌子第三句集『金剛』 平成2811 ふらんす堂

                       西本真里


  赤子はやべつぴんさんや山桜


 本の帯に書かれた句である。

 桜が描かれた表紙と共に強いインパクトを受けた。

 静かではあるが強い芯、そして何よりも温かくおおらかな心。


  海桐の実鳶はきれいな声あげて

  廃校の時計の生きてさくら草

  孑孑や雲は浮いたり流れたり


  「青草」を主宰され、「晨」の同人。

 鳶も時計も雲もみんな命を持ち、躍動している。

生きている。


  草花や正岡子規の眼がきれい

  水澄みて甲斐は夕日の沁みる国

  どこにでも日輪一つあたたかし


 第二句集を編まれた後、ご主人を亡くされ、さぞ色々な思いをされたであろう。

句はさらに深く優しくほのぼのと明るい。

どうぞ更なるご活躍を。

  

  おもひきり遺影の笑ふビールかな


 悲しみの中にもご主人と共に在るという強さが感じられる。


(平成30131日発行)


 


 

f0118324_20461600.jpg

『ランブル』(上田日差子主宰)

        20181月号 創刊20周年


 ☆草深昌子句集『金剛』        上岡沙羅



   ~金剛をいまし日は落つ花衣~     



五年前にご主人を亡くされたあとの第三句集である。

大峯あきら氏代表「晨」同人参加、岩淵喜代子代表「ににん」同人参加、

現在「晨」同人、「青草」主宰、カルチャーセンター講師


  露けしやかたみに払ふ蜘蛛の糸

  一葉落つここなる風の通り道

  初時雨駆けて鞍馬の子どもかな

  一枚の朴の落葉を預かつて

  深吉野に深き空あり藁盒子


詩情にあふれ、作者の自然に向ける優しさが読手の心に染み入る。


  赤ん坊下ろして梅の咲くところ

  赤子はやべつぴんさんや山桜

  竹夫人七瀬を風の越え来たる


七瀬は平安時代以降宮中で行われた陰陽道の祓の場である七つの瀬のこと。

添い寝籠でとる夏の涼に色香が漂う。

自然の大きな優しい抱擁力が赤子を包んでいる。


  七夕やみんな大きくなりたくて

  ちやんちやんこ何かにつけて笑ひけり

  水鳥は水の広きに睡りけり

  どこにでも日輪一つあたたかし

  行春や鳥居の前の立話

  あめんぼう大きく四角張つてをり


 どの句にも、自然や子供への優しさ、愛が根底に流れているのが感じられ、心癒される思いがする。


 大峯あきら氏の「季節とはわれわれ自身を貫ぬいている推移と循環のリズムである」を信条に、第四句集の上梓をお祈りいたします。

 


# by masakokusa | 2018-03-03 20:19 | 第3句集『金剛』NEW! | Comments(0)
俳句雑誌「ハンザキ」(橋本石火主宰)・特別作品

  

    冬日               草深昌子

                     「青草」主宰・「晨」同人                          

                          句集『青葡萄』『邂逅』『金剛』


f0118324_18551774.jpg



   ぽかぽかとしたる冬日に詣でけり


   常磐木の丈高ければ枯木また


   波乗りの波と来たれるクリスマス


   ここに柚子向かうに蜜柑人の庭


   晴れがましすぎはしないか干蒲団



       ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


   鎌倉吟行は20年以上続いているが、自然の風光は会うたびに新しい。

   何より、蜑の苫屋風の会場ながら、句会の先輩諸氏に、今もって狎れるということがない。

   ちょっとトキメク、それが一番楽しい。




 

  編集後記


  特別作品を「青草」主宰の草深昌子先生にお願いしました。

  物を見る感性の独自さのあるお句に学びたいと思います。(石火)



(俳句雑誌「ハンザキ」№30・2018年2月号所収)




# by masakokusa | 2018-03-02 18:21 | 俳論・鑑賞(2)NEW! | Comments(0)
受贈書誌より感銘句(平成30年2月)                  草深昌子

貴重な御書誌をご恵贈賜り有難うございました。


f0118324_20062033.jpg

「雲取」№246 20183月号

   白猫を丸く描きし初暦         鈴木太郎

   返り花紅し五葉の松の下        下條杜志子

   国を出ずこの地球(ほし)を出ず初笑  鈴木多江子


「八千草」季刊俳句誌 平成30年如月

   昨日より尖る阿夫利嶺人恋し      山元志津香

   数式のするする解けそう夜の秋     横山博行


「都市」都市10周年記念号 平成302

   一振りの太刀を受け取り舞始め   中西夕紀

   幼くて肩そびやかす寒烏      中西夕紀

   風花や旧街道は石敷かれ      中西夕紀

   馬鈴薯の花や下校の子は歌ひ    三森 梢

   小春日や分岐点ある切通      岩原真咲


「詩あきんど」HAIKAI其角研究 第30号 平成302月号

   何もなく夫婦なりけりお元日     二上貴夫

   爾今なしと思へばけふの秋の富士   竹村半掃



句集『かはほり』橋本石火 文學の森 平成25年4月


    伸びるだけ伸びて糸瓜の曲りをり

    帰省子のすぐゐなくなる畳かな

    尼寺に遊ぶ子のゐて梅もどき

    学業をおろそかにして着ぶくれて

    かはほりのゆふべあやしきわらべ唄


句集『蛍川』加山紀夫  角川書店 平成30年1月刊行


   走る子の桜の中に浮いてをり

   松手入海に日陰のなかりけり

   蛍川昼は山鳩鳴いてをり

   電線に雪の積もれり裕明忌

   縄掛けて荒ぶる神へ新豆腐




f0118324_10453076.jpg

「松の花」平成302月号

   枯芝をまつすぐに来る傘ひとつ    松尾隆信

   大潮に遠のく烏帽子冬隣       横山節子


「里」二千十八年2月号№179

   夕日にはまだ白けれど冬の暮   島田牙城

   元日の暮るるを言へり齢人    中村与謝男

   

「阿夫利嶺」平成302月号№251

   黒檀に置く冬の壺誕生日      山本つぼみ

   風花や誰を待つともなく昏れぬ   小沢真弓


「俳句饗宴」2018・2(第756号)

   竹伐つて竹割つて扨て年用意   鈴木八洲彦

   やあと友寄り来手袋脱ぎながら  末永隆雄


『岸本尚毅集』自註現代俳句シリーズ・1227 


   金網に吹きつけらるる野菊かな  句集『鶏頭』

   手をつけて海のつめたき桜かな  句集『舜』


   淋しさはわが子と遊ぶ春の暮   句集『健啖』

   健啖のせつなき子規の忌なりけり  〃

   また一つ風の中より除夜の鐘    〃


   雨だれの向うは雨や蟻地獄    句集『感謝』

   ゆるやかに光陰夏を離れけり     〃

   ある年の子規忌の雨に虚子の立つ   〃

   さういへば吉良の茶会の日なりけり  〃


   眼のまはり鱗大きく穴惑     句集『小』

   蟻楽し蟻の頭を蟻が踏み       〃

   熱燗の愛嬌はあり風情なく      〃

      愛嬌はあるが風情はない。風情はないが愛嬌はある。

      そんな店。そんな人。そんなひととき。 


f0118324_22364712.jpg

『武藤紀子』シリーズ自句自解Ⅱベスト100


   山かけて赤松つづく円座かな   句集『円座』

   住吉の松の下こそ涼しけれ    句集『朱夏』

   完璧な椿生きてゐてよかつた   句集『百千鳥』

   富士山の雪の色して志      句集『冬干潟』

   梛の葉に来てしばらくを冬の蠅     〃

   たましひをしづかに濡らす緑雨かな   〃

   またも来むあふちの花の咲く頃に    〃

      第四句集『冬干潟』の最後に置いた句。この句集ではさまざまな俳句の作り方に挑戦してきたが、

      やはり私は吟行で写生して句を作るんだなあとしみじみ思った句。



「晶」季刊俳句同人誌№2
   枯野原単線列車眠くなり               長嶺千晶
   きちきちを隠せる草のやはらかき     嶋澤眞理


「朴の花」第102

   これよりは鳥獣保護区鳥兜      長島衣伊子

   地下鉄に乗り込んでくる大熊手    矢島康吉


「秋草」20182月号

   昼どきの土間のしめりや石蕗の花     山口昭男

   削られしモツアレラチーズ冬の鳥     常原 拓


「らん」№80 らん創刊80号記念

   『らん』は「蘭」「乱」「嵐」なり楽しまん     鳴戸奈菜

   立ち話をんなはマスク外さずに           嵯峨根鈴子


「獅林」20182月号№965

   路ゆづり合うて躓く花野かな     的場秀恭

   お後がよろしいやうです二月尽    岩佐世紀子


「雲取」20182月号№245

   ともづなを曳けよ掲げよ初山河       鈴木太郎

   万灯の湧いて上つて本門寺         下條杜志子


# by masakokusa | 2018-02-04 23:33 | 受贈書誌より | Comments(0)
受贈書誌より感銘句 (平成30年1月)         草深昌子


 貴重な御誌をご恵送賜り有難うございました。


f0118324_10103801.jpg


「ににん」2018年冬号№69

   坩堝から坩堝に移す葉鶏頭     岩淵喜代子

   小春日や柱の影に女の子      川村研治


「ハンザキ」20181月号№29

   もう捨つる気になつてゐる古暦      橋本石火

   落ちさうで落ちぬカリンの実が幹に    神戸道子


「ランブル」20181月号№239 創刊20周年

   着ぶくれて嫌ひが好きになることも     上田日差子

   爽やかや風に奥行ある故郷         森 孝枝


「絵硝子」20181月号 22周年記念号

   初明り目指すべき道しかと見え      和田順子

   雪虫を連れて杜氏の来たりけり      平野暢行


「俳句饗宴」20181月号(第755号)

   はじめての雪へ受話器を向けて妻      鈴木八洲彦

   卒寿とは喜ぶべきか実南天         小岩よし子


「年輪」20181月号(733号)

   鶏二忌の雨にまんさく二度咲きす      坂口緑志

   火山列島一岳火噴き鷹渡る         駒木逸歩


「星雲」20181月号第41

   初鴨や一の鳥居は海に立つ        鳥井保和

   背伸びして子の背を計る良夜かな     天倉 都


「梓」2018・1第29

   皿に鮭壁に高橋由一の鮭        上野一孝

   健次忌の海暮るるまで泳ぐなり     堀本裕樹


「はるもにあ」20181月号第66

   噛みしめてアイヌ語といふ柳葉魚かな     満田春日

   寒かろう皇帝ダリアのその高さ        松山ひろし


「里」20181月号№178

   荒巻の箱紙ごみとして縛る      島田牙城

   冬菜畑三つならびに建つ住宅     上田信治


「秋草」20181月号

   綿虫の中へ入つてゆく体       山口昭男

   北斎の波のうらがは秋寂びぬ     三輪小春


「舞」平成30年新年特別号№85

   豊かなる父の欠伸や初湯殿        山西雅子

   はるばる台風めがけて集まって無口    小川楓子


「玉梓」12月号

   初時雨しばらく人の途絶えけり      名村早智子

   船形の火を押す風や東より        松澤美智枝


「燦」2017年11・12月号

   朝寒し星々いまだ夜を続け      山内利男

   踊子となりて見上ぐる指の先     後藤一郎


「パピルス」創刊号20181月(春号)

   吾亦紅一誌を興すこころざし      坂本宮尾

   小机の月のひかりに手をのせる     栗島 弘


「鳳」23

   やうやうに灯りに馴染み初暦     浅井陽子

   縄張りの中に我が家も冬の鵙     田和三生子


「大楠」20周年記念特別号 1月号

   二十周年迎ふる初日受けにけり     川崎慶子

   せせらぎの八瀬の里かな冬うらら    小坂保瑞


「阿夫利嶺」1月号

   ことごとく絵馬濡れ根津に深む秋      山本つぼみ

   そぞろ寒起居に触るるものなべて      小沢真弓


「松の花」1月号

   色変へぬ松の真鶴岬かな       松尾隆信

   行く秋や松葉一本づつに雨      横山節子


「獅林」20181月号№964

   冬めくやどこでも停まる過疎のバス     的場秀恭

   ゆりかもめ大河にはある中之島       森一心


季刊俳句同人誌「晶」SHOU №22

   箱書を後生大事と後の雛     長嶺千晶

   羅や月の色して畳まれぬ     嶋澤眞理

   

   

   

   


# by masakokusa | 2018-02-04 09:47 | 受贈書誌より | Comments(0)
原石鼎俳句鑑賞・平成30年1月                 草深昌子


f0118324_10124025.jpg

  

   草庵や屠蘇の盃一揃    原石鼎 大正14年




 「草庵や」という打ち出しに、正月を迎えた厳粛な佇まい、すっと伸ばした背筋のほども見えるようである。

正座の前には、朱塗りであろうか黒塗りであろうか屠蘇器の一揃いが正しく置かれている。

屠蘇を入れる銚子には年神様よろしく水引が結ばれ、屠蘇をいただく盃は大中小の三つが美しく重ねられている。

屠蘇台には松竹梅が大きく彩られていることだろう。

「一揃」とは、あたりの邪鬼を一切祓って、いまここにあるのは淑気そのものだと言い切っているのである。

草庵といえば、文字通り草の庵、粗末な家ということであるが、この草庵こそは石鼎にとって最も胸の張れる居場所であったに違いない。

隠遁というほどではないが、脱俗的生き方がわが家を草庵と言わせるのである。

草庵であることが、目出度いのだ。

質素であっても、伝統に繋がって生きる者の豊かさに自負を匂わせている。

ひそかにも満ちたりた思いがふつふつと込み上げたことであろう。


年配の趣すら感じられるが、この年、石鼎は39歳。

一年数カ月前には、関東大震災の大ショックを受けたばかりであった。以後に来たした神経衰弱も、ここには鎮められている気配である。


関東大震災の前、大正10年には、明るい正月風景が詠いあげられている。


打ちあげし羽子翻るとき日の光    大正10

  外れ羽子の大注連に添うて落る時

  つきあげし羽子の白さや風の中

  外れ羽子の斜にとんで風の中

  遣羽子の聊かの色を好みけり

  遣羽子の影いづれともなく逃げし

  色羽子の咲くごとく生きて松へくだる

  

「屠蘇」の句も、「羽子」の句も、としどしの正月を迎えるその心は、天地への敬虔なる思い一つのように感じられる。


天地をいたはりみるや去年今年   昭和7


神経衰弱に端を発したかのような病気の正体は何であったのだろうか。

石鼎の年譜を見ると快方に向かっては又悪化するというような記述に終始している。

天地が健やかであれば石鼎もまた健やかであり、天地が病めばまた石鼎も病むというようなところが正直な日々であったろうか。

石鼎の精神は常に、天の神地の神に投じられていた。

自身の養生と同様に、天地へ寄せる心根も又一途に慈しむものであったのであろう。




 


# by masakokusa | 2018-02-03 09:48 | 原石鼎俳句鑑賞 | Comments(0)
昌子365日(自平成30年1月1日~至1月31日)
       1月31日(水)      水甕に如雨露浸かりしまま氷る

       1月30日(火)      邸内に落葉を踏まぬ路はなし

f0118324_19260031.jpg
       1月29日(月)      目が合うて風の日のゆりかもめかな

       1月28日(日)      朽木とも枯木ともなく巨木なる

       1月27日(土)      戸障子のどれも開くや梅早し

       1月26日(金)      探梅の外厠など一とのぞき

       1月25日(木)      寒林の奥にまた奥ありにけり
f0118324_09260949.jpg
       1月24日(水)      一声に鳴いて鴉や雪の宿

       1月23日(火)      雪の日の電車に席を得たりけり

       1月22日(月)      長屋門潜りなほして日脚伸ぶ

       1月21日(日)      大寒や日は満月のやうに照り

       1月20日(土)      寒林のどこからとなくかぐはしき

f0118324_16412378.jpg


       1月19日(金)      蕾とも芽ともふくらむ寒土用

       1月18日(木)      しみじみと君がもの言ふ寒燈下

       
1月17日(水)      うち晴れて地蔵通りや小正月
 
       1月16日(火)      冬萌やものめづらしく墓を見て 
     
       1月15日(月)      遠に見てしろじろあるは梅かとも

f0118324_18040926.jpg

      1月14日(日)      買初やラメ入りにしておとなしき

      1月13日(土)      座布団を干しがてらなる日向ぼこ

      1月12日(金)      パンダ舎を外れて今川焼を食ふ

      1月11日(木)      日脚伸ぶ墓域のどこかしらに声

      1月10日(水)      着ぶくれて見上ぐる鴉鳴きにけり

f0118324_10254511.jpg

      
      1月9日(火)      寒晴のさても大きくばつたんこ

      1月8日(月)      薔薇色がよぎりし鏡初めかな

      1月7日(日)      人日の風船とゆくしやぼん玉

      1月6日(土)      枝折戸に錠前かたく笹鳴ぬ

      1月5日(金)      生籬のここは疎にして水仙花


f0118324_17472681.jpg


         
      1月4日(木)      大広間けふは二人や牡丹鍋

      1月3日(水)      あはうみに姉妹の子(ね)の日してをりぬ

      1月2日(火)      初旅の蘇我馬子をこのあたり

      1月1日(月)      虚子編の新歳時記や福寿草

     
         
f0118324_09112358.jpg

   
 明けましておめでとうございます。
 いつも「草深昌子のページ」をお開き下さいまして、
 本当に有難うございます。
 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。    

# by masakokusa | 2018-02-03 08:59 | 昌子365日 new! | Comments(0)
課題詠   兼題=虎落笛    晏梛みや子選
   
   特選

      文机に突つ伏してゐる虎落笛      草深昌子


    稿の成った安堵かしら、それとも真逆の遅々と進まない放心の・・・。
    季語が季語、その扱いに注目しました。


f0118324_20224670.jpg
   秀逸

      七草の粥や朝日子はちきれて      草深昌子


(「晨」平成30年1月号所収)

# by masakokusa | 2018-02-02 10:28 | 昌子作品の論評 | Comments(0)