特別作品                  草深昌子
 
     花は葉に 

    見えてゐる人に電話を花の山
   
    米蔵といふは白壁春蚊飛ぶ
   
    花冷の水神さまにきはまりぬ
   
    防風のおひたし花を惜しみけり
   
    目借時百の木魚に一つ鉦
   
    散る花や金粉のごと塩のごと
   
    花は葉に柱時計は鳴りにけり
   
    立川に降りてみどりの日と思ふ
   
    たんぽぽの絮をはなさぬ寒さかな
   
    桐の花胸ポケットのふくらみぬ



 桜をピークに、なだれるように花々が咲き揃うと、五臓六腑はにわかに波たってくる。エネルギーを新たにする季節である。やがて立夏ともなると、満目の緑がそよぐ。そして代掻き。見渡す限り水を湛えた代田はしみじみとこころ落着く。あわただしかった時の流れに人心地がつくのである。
 
   夏はじめ五臓六腑を水平に  宇多喜代子
 
 五臓六腑とは即ち生き身のこと。水平にというのは即ち清々しいということ。まさに実感している。

     (2005年7月号「晨」第128号所収)
by masakokusa | 2007-09-06 19:12 | 昌子作品抄 | Comments(0)
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