『俳句研究』・テーマ競詠8句             草深昌子
     〈新年を植物で詠む〉
           
     すずしろ                         

    去年今年岩のあたまに蘚載りし
  
    初国旗いささむらたけふくかぜの  
  
    娘は万両母は千両のこころばせ
  
    楪や我鬼にたっぷり水やつて
  
    人のゐるところに開く寒牡丹
  
    水仙の匂ひのストラヴィンスキー
  
    すずしろのほわんとしたる葉っぱかな
  
    一塩の七草粥にまはりけり


 (平成16年2月1日発行「俳句研究」2月号所収)

     
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     『俳句』・俳人スポットライト

     莟のやうな

    犬ふぐり垣根も塀もなかりけり
  
    沈丁の莟のやうな芽のやうな
  
    蝌蚪の紐その先端のふはふはす
  
    啼き方をかへても鴉風光る
  
    春の滝四角四面でありにけり
  
    白梅や小さく深くお弁当
  
    蝶生るあたたかすぎてありしかな 
  
    
    幾億のいのちの末に生れたる
             二つの心そと並びけり 白蓮

 
 好きな一首である。
 こんな巡り合いの心になぞらえるのは唐突かもしれないが、俳句の詠み手と読み手の遭遇も又、喜びとともに敬虔な気持ちに立ち返らせてくれるものである。
 第二句集『邂逅』に寄せて、いくたびもはっとするようなご鑑賞をいただいて有り難かった。

『俳句研究』・テーマ競詠8句             草深昌子_f0118324_21253569.jpg

 (平成16年5月1日発行「俳句」5月号p287所収) 
by masakokusa | 2007-05-25 22:59 | 昌子作品抄
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