草深昌子『邂逅』
著者の第二句集。平成三年から平成14年まで12年間の作品より325句収録。
赤梨に田舎の日差しとぞ思ふ
おしなべて秋草あかきあはれかな
セーターの黒の魔術にかかりけり
ぼうたんに非のうちどころ無くはなし
青田風とは絶えまなく入れ替はる
露時雨傘を刀に鞍馬の子
くろぐろと睫毛のあれば春眠し
沸く力雲にありける子規忌かな
一読、発想の新しさと非凡な表現力による俳句の形が際立っている。岸本尚毅氏の栞文に「表現に抑えの効いた言葉に対する制御が行き届いている句集」とある。抑えた分だけ逆に読者に深い想像力を生ませてくれる。俳句の真髄を貫きつつご巧吟を。
昭和18年大阪生まれ。飯田蛇笏高弟の植村通草氏に師事。「雲母」入会。「鹿火屋」入会同新人賞。同同人。近松顕彰全国俳人大会文部大臣賞。第一句集『青葡萄』『平成俳人大全集』共著。鹿火屋奨励賞。深吉野佳作賞。現在「晨」「ににん」同人。俳人協会会員。(ふらんす堂・2400円)
(平成15年10月発行、藤木倶子主宰「たかんな」平成15年10月号 p97所収)