青草通信句会講評・令和5年7月        草深昌子

青草通信句会・講評


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  七月の兼題は「日傘」。

「日傘」と言えば、フランスの画家モネの描いた「日傘をさす女性」が思い浮かびます。

又、小倉遊亀の描いた「径」、その小径を行く母と子の日傘も好きです。

まこと日傘は絵になる季題のようです。


 草山をまた一人越す日傘かな      渡辺水巴

水巴は花鳥画の大家渡辺省亭(せいてい)の長男です。

「草山をまた一人越す」は、水巴ならではの動的な捉えかたですが、

私はやはり、モネの絵に重ね合わせてその風景を広げたくなります。


 降りしきる松葉に日傘かざしけり    星野立子

 大峯先生と伊勢の海女の地へ旅しました折、どこのお寺でありましたか、

 境内の大木の松から落葉が音もなくはらはらと降りかかってきました。

 句友はみな日傘をさしておられ、思わず立子の一句が口を衝いて出ました。

 全く、眼前の光景の通りであったのです。

俳句は出合いがしらを、そのまんま詠いあげる、

作為のないのが一番だと気付かされたことで、印象深いものです。

ただ、「松落葉」(散松葉)も夏の季題ですので、主題は五分五分というところでしょうか。


   墓に来て日傘の太く巻かれけり     岸本尚毅

 第一句集『鶏頭』所収。以下は岩田由美氏の鑑賞です。

  ――暑い折の墓参りだ。強い日差しの中を墓にたどりつき、一通りのことをするためにまず日傘をたたむ。

 折り畳んでくるくると巻かれた日傘の、その太さに眼を留めた。

 雨傘と違って、麻や木綿でできた日傘はたたむと以外と太くなるものだ。

 それに気づいたのが墓であったことも句に情趣を添える。

 せわしなく流れていく日常生活をふと離れた場所で、周りにあまり大勢の人がいることもないだろう。

 そんなとき普段は意識されないような些細なことが目に留まるものだ。―ー

この鑑賞の「雨傘と違って」に、はっとします。まさに日傘らしい在りようの発見、日傘そのものの描写になっています。


俳句が好きで、吟行が好きで、自然のさまざまに触れることが何より楽しい、

このような姿勢で俳句を学んでいきたいものです。


by masakokusa | 2023-07-11 10:35 | 昌子の句会・選評
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