「詩あきんど」(主宰 二上貴夫)№43
八十の媼やけふの雛納 二上貴夫
一枚の薄氷水と流れけり 佐野典比古
「朴の花」(主宰 長島衣伊子)№112
風に立ち一花守りぬ朴青葉 長島衣伊子
清明や岬の鳶の風切場 八木次郎
「ランブル」(主宰 上田日差子)№279
さざなみに鯉魚のささめく雨水かな 上田日差子
一生のうちの一日目刺焼く 田中義孝
「銀化」(主宰 中原道夫)№272
點綴(てんてい)のもの芽尖れる日の御加護 中原道夫
暖かや寺社仏閣にさん付けて 石山昼妥
金子敦句集『シーグラス』第六句集(ふらんす堂)
ゆく夏の光閉ぢ込めシーグラス 金子敦
抱き上げて子猫こんなに軽いとは
紙皿の縁のさざなみ山桜
寒月とチェロを背負つて来る男
ゼーターの胸にトナカイ行進す
「雲取」(主宰 鈴木太郎)№318
音もなく鳶の空ゆく春の暮 鈴木太郎
春の夜読むべき本を積んで置き 下條杜志子
石原静世句集『栗おこは』第一句集(本阿弥書店)
金風や赤子の声のはや母似 石原静世
今生の田を植ゑ終へて逝き給ふ
とろろ汁脳天に沁む津軽三味
生身魂枕の下に子の手紙
春の雪抱かれ上手になりて姑
「松の花」(主宰 松尾隆信)№281
この村の一軒ごとの梅の花 松尾隆信
遥拝に似て雪深き兄の墓 岸桃魚
「鳳」(主宰 浅井陽子)№41
老いてより仲良き姉妹椿餅 浅井陽子
大川は流れいそがず去年今年 森山久代
「炎環」(主宰 石寒太)№491
みちのくの燕よ迷はずに来しか 石寒太
自転車の転倒二度目木瓜の花 河野幸子
「枻」(代表 橋本榮治・雨宮きぬよ)№303
春の鷺風の向かうに歩みゆく 雨宮きぬよ
ひと言に真鯉値引かれあたたかし 橋本榮治
「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№69
よく滑るそろばん珠や春闌くる 橋本石火
涅槃図の月の光をつつしめり 渡辺みえ子
『十七音の旅』櫂未知子(北海道新聞社)
北海道新聞好評連載 異色の俳句エッセイ
地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子
明けない夜はない
やまない雨はない
そして解けない雪も、もちろん、ない。
古今の名句に故郷・北海道への思いを重ねて。
かくも遥かな俳句の旅へ、ご一緒に――
遠藤由樹子句集『寝息と梟』(朔出版)第二句集
単純なひかりがここに草若し 遠藤由樹子
抱卵の鶴に寄りそふ鶴しづか
生者らのさくさく崩すかき氷
秋の風鈴まるで初めて鳴るやうに
崖あらば崖に立ちたし鳥渡る
「大阪俳人クラブ」会報(会長 山下美典)№169
早梅の四五輪にして風匂ふ 室田妙子
渓底に一水光る野梅かな 村手圭子
「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№290
去るは追はず蘞み(えぐみ)はげしき蕗の薹 山本つぼみ
春塵や乗客の無きバス発ちぬ 金行康子
『俳句年鑑』2021年版(本阿弥書店)
お彼岸や林の深く野の広く 草深昌子
森有也句集『鉄線花』第一句集(コールサック社)
春寒や壱の字を掻く馬の足 森有也
世捨て人たらんと拾ふ落椿
滝の水割つて鳥飛ぶまつしぐら
生涯の役をこなしてこの無月
枯菊を括れば胸に日の匂ひ
「晶」(代表 長嶺千晶)№36
凧の糸繰り出す父の真顔なる 長嶺千晶
切株の芯のしめりも十二月 加藤いろは
「玉梓」(主宰 名村早智子)№93
大空を知つてしまひし燕の子 名村早智子
子のすくふ水はももいろ冬ぬくし 森下哉美
「獅林」(主宰 的場秀恭)№1004
いとほしむ余生や春の夜の吐息 的場秀恭
雨音の加勢してゐる春一番 池田惠美子
「秋草」(主宰 山口昭男)№137 若き師のまなざし思へ燕 山口昭男
干物に糊の匂ひや落椿 橋本小たか