受贈書誌より感銘句(令和元年5月)    草深昌子抄出

「鳳」(主宰 浅井陽子)№30

   男山の竹と答へて垣繕ふ      浅井陽子

   おもてより裏明るくて朴落葉    貞許泰治


「獅林」(主宰 的場秀恭)№981

   見えてなほ遙けし道や陽炎へる     的場秀恭

   ひとひらにはじまる落花きりのなく   東 徹


「雲取」(主宰 鈴木太郎)№258

   土筆食ひ平成の世のあと十日      鈴木太郎

   今生の終章にして土筆煮る       下條杜志子


「八千草」(主宰 山本志津香)№90

   貌鳥に遺文の束をあづけよか     山本志津香

   冬館ラブラドールの名はピアノ    横川博行




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句集『和顔』矢野景一

   星一つ足りぬと梟鳴きにけり

   彗星の尾の涼しさの山住まひ

   蛍見にゆかむと白き髪洗ふ

   呼んだかと妻の問ひ来る夜長かな

   とり分けて箸もその香の桜餅

   

「棒」(代表 青山丈)№3

   天井を見てゐる春の昼ごろは       大崎紀夫

   いま巴里にアイスクリーム二段盛り    西池冬扇


句集『にんげんに』 竹村半掃

   うらうらや縄文人の耳飾り

   にんげんにすればいいやつ蝸牛

   九月来るスクランブルの交差点

   蒸し芋を頬張る朝や外は雨

   大山の風湧くごとく初鳶



「ランブル」(主宰 上田日差子)№255

   行く雲と同じ色なる春帽子      上田日差子

   店蔵の梁をあらはに雛飾る      芦立多美子


「朴の花」(主宰 長島衣伊子)№106

   綿虫の夕日の綿を鎧ひけり     長島衣伊子

   煮魚の大きな目玉初しぐれ     八木次郎


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「はるもにあ」(主宰 満田春日)№74

   沈丁花植物園を出て匂ふ       満田春日

   二つ三つ重ねてかろき絵凧かな    山口蜜柑


「松の花」(主宰 松尾隆信)№257

   日脚伸ぶ机上の小さき窓に富士     松尾隆信

   目刺焼く二連八尾や二人なり      岸 さなえ


「詩あきんど」(主宰 二上貴夫)№35

   風吹かぬ焼芋日和でありにけり    二上貴夫

   父の忌や空を真青に山眠る      佐野典比古


「俳句の風」(代表 西池冬扇)№26

   鳥の声やみたる午後の夏木立     白石正躬

   降り出して値の折り合へる植木市   椎名 彰


「大阪俳人クラブ」(会長 茨木和生)№161

   山霊に石を供へて春祭         木塚真人

   席詰めて呼び入れらるる日向ぼこ    尾崎晶子

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「里」(代表 島田牙城)№190

   裸木の幹をさするはさびしいか      島田牙城

   遠ければ霞みて冬のうららかに      堀下 翔

   

「星雲」(主宰 鳥井保和)№49

   寒鯉の錦の美しき底ひかな      鳥井保和

   面頬をとれば湯気立つ寒稽古     澤 禎宣


「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№266

   畳紙にたたみこみたる花疲れ     山本つぼみ

   繁盛の列や栄螺を焼く匂       吉里良夫


「晶」(代表 長嶺千晶)№28

   読初やデッキチエアーに海展け     長嶺千晶

   飛び石をそろそろ渡り柳の芽      金崎雅野


「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№45

   剪定の跡あらはなる枝垂梅    橋本石火

   トンネルの小さき出口春日差   河本裕子


「鳳」(主宰 浅井陽子)№29

   小袱紗を畳に拡ぐ余寒かな        浅井陽子

   破れざるままに障子の黄ばみけり     貞許泰治


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『名村早智子集』自註現代俳句シリーズ

    浮御堂七夕竹の流れ着く

    この声は罠に掛かりし鹿のこゑ

    足が出て手が出て蝌蚪に別れの日

    表情を決めかねてゐる祭姫

    夫に来る手紙少なし金魚玉

   

「玉梓」(主宰 名村早智子)№81

   白木蓮の全部の花が咲いてゐる      名村早智子

   生き生きと生きるひとりや実千両     藤野美奈子


「獅林」(主宰 的場秀恭)№980

   盆梅や追伸をまた書き足して     的場秀恭

   さびしらの空に道あり鳥雲に     あめ・みちを


「秋草」(主宰 山口昭男)№113

   まんさくにゴム手袋の男かな     山口昭男

   蒲公英や踏切ひらくとき静か     水上ゆめ


by masakokusa | 2019-05-18 13:38 | 受贈書誌より
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