受贈書誌より感銘句(平成30年10月)                  草深昌子抄出


『寒紅梅』山本洋子第七句集(角川俳句叢書)

   山道に潮鳴りをきく翁の忌      山本洋子

   おくれきし人のまとひし落花かな

   雛壇の端に眼鏡を置きにけり

   お祝を言ふ囀の木の下で

   木槿咲くところを家のうらといふ

   八朔や住吉に来て潮匂ふ



「雲取」(主宰 鈴木太郎)№254

   棉の桃囃してわれらただよへる      鈴木太郎

   八朔や真潮の島へ墓訪ひに        下條杜志子



「都市」(主宰 中西夕紀)通巻65

   演能もきのふとなりし蛾を掃けり     中西夕紀

   ころもがへ袖から風がぬけてゆく     城中 良



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「群星」(代表 藤埜まさ志)№177

   蝉声のなかのひぐらし草田男忌    藤埜まさ志

   急ぐ毛虫一本の毛も休むなく     博沼清子



「ランブル」(主宰 上田日差子)№248

   大花野仰ぐはちぎれ雲ばかり     上田日差子

   追はれても追はれても稲雀かな    大庭星樹



「朴の花」(主宰 長島衣伊子)第104

   平らかな岩の瀬音や鳳蝶      長島衣伊子

   乙女らに囲まれてゐる夏期講座   矢島康吉



「里」(主宰 島田牙城)№187

   秋爽の入江深きに白き浜       島田牙城

   大型テレビ動かすことも盆支度    仲寒蝉


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『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』岸本尚毅・夏井いつき


  はじめに      夏井いつき


 岸本尚毅さんは、私より数歳年下にもかかわらず、古今東西の俳句が立ちどころに出てくる恐るべき記憶力、

 評論・論評における鋭く深い分析力に舌を巻くばかり。

 作品は勿論のこと、彼が書いたものはとにかく手に入れて、読んで、己の勉強とすることを繰り返してきました。

 キシモト博士が俳句界をリードしてきたこの30年間、私自身は「俳句の種まき」運動を続けてきました。

俳句にちょっと興味を持ち始めているいる人たちを勝手に「チーム裾野」と名付け、コツコツ俳句の種をまき続けてきました。

 本書では、私は徹底して「チーム裾野」の代弁者となって、キシモト博士に疑問をぶつけました。

 キシモト博士との「講師問答」は、実に興味深く、学ぶって楽しい!を満喫した時間でした。



  この本の読み方・使い方   

 

 岸本尚毅

  ―俳句に精神論は無用。徹底的に「型」を学び、「発想法」を練習する


 おしまいに―

  キシモト博士が肝に銘じている三つのこと


 (平成30年9月10日初版第一刷発行  祥伝社





「松の花」(主宰 松尾隆信)250号記念号

   七月一日雨垂れへあるきだす     松尾隆信

   俎板に明石の章魚の足二本      渡辺絹江




「古志青年部作品集」2018  第七号 (石塚直子編集)

   ほのぼのと田舎の春やボーリング     西村麒麟

   我もまたいぶされてゐる蚊遣かな     辻奈央子



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「里」(代表 島田牙城)№18

   寝つかざる子を負ふ一人橋涼み      中村与謝男

   戦争で逝きたる人へ秋立ちぬ       島田牙城



「梓」(代表 上野一孝)第32

   凌霄花をりをり見てやもの書ける     上野一孝

   こころづく空にあをすぢあげはかな    堀本裕樹



「ににん」(代表 岩淵喜代子)№72

   流されてゆく形代の袖ひらく      岩淵喜代子

   霧を生み霧の模様の延暦寺       川村研治



 ふたり句集

 『守宮&燕の子』 えのもとゆみ・榎本享


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    おたまじゃくし既に蛙の目でありぬ    えのもとゆみ

   ころころと蜷のゐてまだ道のなし

   挿木する頭の中は釣りのこと

   ゑのころや火星左で土星右

   黒ずみしバナナ一本火恋し



   青虫が大きすぎるよ雀の子         榎本 享

   牡蠣の殻こする束子はそれぢやない

   目の前に偏平足の素足かな

   男厨房に天麩羅の藷つまむ

   おんぶしてもらへぬはうの飛蝗かな



 岸本の選にもとづいて編まれた句集。

 しかも「特選句」のみ。否応なく岸本の選が試される。

 爽波なら、裕明ならどんな句を採っただろうかと自問しても詮方ない。

 享さんと孝行嫁のゆみさんと、

岸本選の合計二名プラスαの俳力で出来た句集である。

どうか読んでください。 ―――岸本尚毅




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「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№38

   滝壺の滝の余勢をなだめけり      橋本石火

   朝のパン真黒こげや初嵐        三谷史子



「秋草」(主宰 山口昭男)№106

   秋の蝶脚やはらかくからみあふ       山口昭男

   草むしる幹の向うへ手を回し        木村定生


   

「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№259

   夭折の戦八月の海を悼む        山本つぼみ

   署名簿にハングル文字や広島夏     小沢真弓


by masakokusa | 2018-10-13 23:55 | 受贈書誌より
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