『寒紅梅』山本洋子第七句集(角川俳句叢書)
山道に潮鳴りをきく翁の忌 山本洋子
おくれきし人のまとひし落花かな
雛壇の端に眼鏡を置きにけり
お祝を言ふ囀の木の下で
木槿咲くところを家のうらといふ
八朔や住吉に来て潮匂ふ
「雲取」(主宰 鈴木太郎)№254
棉の桃囃してわれらただよへる 鈴木太郎
八朔や真潮の島へ墓訪ひに 下條杜志子
「都市」(主宰 中西夕紀)通巻65号
演能もきのふとなりし蛾を掃けり 中西夕紀
ころもがへ袖から風がぬけてゆく 城中 良
「群星」(代表 藤埜まさ志)№177
蝉声のなかのひぐらし草田男忌 藤埜まさ志
急ぐ毛虫一本の毛も休むなく 博沼清子
「ランブル」(主宰 上田日差子)№248
大花野仰ぐはちぎれ雲ばかり 上田日差子
追はれても追はれても稲雀かな 大庭星樹
「朴の花」(主宰 長島衣伊子)第104号
平らかな岩の瀬音や鳳蝶 長島衣伊子
乙女らに囲まれてゐる夏期講座 矢島康吉
「里」(主宰 島田牙城)№187
秋爽の入江深きに白き浜 島田牙城
大型テレビ動かすことも盆支度 仲寒蝉
『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』岸本尚毅・夏井いつき
はじめに 夏井いつき
岸本尚毅さんは、私より数歳年下にもかかわらず、古今東西の俳句が立ちどころに出てくる恐るべき記憶力、
評論・論評における鋭く深い分析力に舌を巻くばかり。
作品は勿論のこと、彼が書いたものはとにかく手に入れて、読んで、己の勉強とすることを繰り返してきました。
キシモト博士が俳句界をリードしてきたこの30年間、私自身は「俳句の種まき」運動を続けてきました。
俳句にちょっと興味を持ち始めているいる人たちを勝手に「チーム裾野」と名付け、コツコツ俳句の種をまき続けてきました。
本書では、私は徹底して「チーム裾野」の代弁者となって、キシモト博士に疑問をぶつけました。
キシモト博士との「講師問答」は、実に興味深く、学ぶって楽しい!を満喫した時間でした。
この本の読み方・使い方
岸本尚毅
―俳句に精神論は無用。徹底的に「型」を学び、「発想法」を練習する
おしまいに―
キシモト博士が肝に銘じている三つのこと
(平成30年9月10日初版第一刷発行 祥伝社)
「松の花」(主宰 松尾隆信)250号記念号
七月一日雨垂れへあるきだす 松尾隆信
俎板に明石の章魚の足二本 渡辺絹江
「古志青年部作品集」2018 第七号 (石塚直子編集)
ほのぼのと田舎の春やボーリング 西村麒麟
我もまたいぶされてゐる蚊遣かな 辻奈央子
「里」(代表 島田牙城)№18
寝つかざる子を負ふ一人橋涼み 中村与謝男
戦争で逝きたる人へ秋立ちぬ 島田牙城
「梓」(代表 上野一孝)第32号
凌霄花をりをり見てやもの書ける 上野一孝
こころづく空にあをすぢあげはかな 堀本裕樹
「ににん」(代表 岩淵喜代子)№72
流されてゆく形代の袖ひらく 岩淵喜代子
霧を生み霧の模様の延暦寺 川村研治
ふたり句集
『守宮&燕の子』 えのもとゆみ・榎本享
おたまじゃくし既に蛙の目でありぬ えのもとゆみ
ころころと蜷のゐてまだ道のなし
挿木する頭の中は釣りのこと
ゑのころや火星左で土星右
黒ずみしバナナ一本火恋し
青虫が大きすぎるよ雀の子 榎本 享
牡蠣の殻こする束子はそれぢやない
目の前に偏平足の素足かな
男厨房に天麩羅の藷つまむ
おんぶしてもらへぬはうの飛蝗かな
岸本の選にもとづいて編まれた句集。
しかも「特選句」のみ。否応なく岸本の選が試される。
爽波なら、裕明ならどんな句を採っただろうかと自問しても詮方ない。
享さんと孝行嫁のゆみさんと、
岸本選の合計二名プラスαの俳力で出来た句集である。
どうか読んでください。 ―――岸本尚毅
「ハンザキ」(主宰 橋本石火)№38
滝壺の滝の余勢をなだめけり 橋本石火
朝のパン真黒こげや初嵐 三谷史子
「秋草」(主宰 山口昭男)№106
秋の蝶脚やはらかくからみあふ 山口昭男
草むしる幹の向うへ手を回し 木村定生
「阿夫利嶺」(主宰 山本つぼみ)№259
夭折の戦八月の海を悼む 山本つぼみ
署名簿にハングル文字や広島夏 小沢真弓