草深昌子の俳句 近作 (2018年)                

   

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   駒と駒鼻をねぶれる大暑かな

   絵団扇や柳は墨に蓮は朱に    

   霍乱のいななき遠くなりにけり

   ここはまた影一つなき園の秋     

   残暑なほ雲にたんこぶ出でにけり 



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   一つ木に土用雀のこみあへる

   さるすべり散り敷く苔のむしにけり 

   本殿の裏に水湧く単衣かな 

   蕗の葉に蝉のもぬけのころげたる 

   涼しさの指にかかりて鼻緒かな 


   線香の墓に散らばる南風     

   蚊に食はれやすく引つ込み思案かな

   道逸れて厠に至る風涼し

   白シャツの門に来れば礼深く

   あひびきのかなはぬ盆の月夜かな


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   若葉して戸毎に違ふ壁の色   

   今し行く小倉遊亀かも白日傘

   浜あれば崖ある南風吹きにけり 

   薔薇守の鎌の大いに曲りたる 

   毛虫を見馬追を見る極楽寺


   芒種けふ路傍の草の丈高く

   梅雨さ中まれに蝶々屋根を越え

   わら屋根の藁のすさびのほととぎす

   絨毯を部屋に廊下にさみだるる

   白雲のよく飛ぶところ通し鴨



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   梅雨に咲く花の色かやこつてりと

   小諸なる古城のほとりサングラス

   どれどれと寄れば目高の目の真白

   蛇の衣脱ぐや高濱虚子の前

   大木のそよぎもあらぬうすごろも


   帰省子のそつくりかへる畳かな

   なにがなし触つて枇杷の土用の芽

   釣堀やひもすがらなる風の音

   落し文解きどころのなかりけり

   ひるがほの咲いてこの橋覚えある


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   雨安居のたまさか孔雀鳴きにけり

   八瀬の橋来たれる君がパナマ帽

   蛍火は大峯あきらかと思ふ

   木登りの子のひよいひよいと南吹く

   夜業終へ道頓堀に吹かれけり


   洞に積む薪卯の花腐しかな

   行春の風に琅玕鳴りにけり

   大船にその人を待つ更衣

   軽暖や骨董市の人の顔

   そこらぢゆう煤けて兜飾りけり


   鳰の子を見てゐる涎少し出て

   母の日の暮れ際汗の冷えにけり

   虫干の師範学校ほど遠し

   沓脱の混み合ふほたる袋かな

   鼻高く唇うすくサングラス


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   春宵の大峯あきら語りけり         
   君と行く吉野の奥のあたたかし
   象谷の水に映りて濃山吹
   虚子忌来る松や欅に風の鳴り
   鳥の巣のあるにたがはぬ鳥のこゑ

   一軒に遠き一軒ミモザ咲く
   墓地のある景色かはらぬ紫木蓮
   亀鳴くや不開の門の大いなる
   朝日子に一輪草の濃かりけり
   鵤鳴くほどに大峯あきら恋ふ

   踏青のいつしか野毛といふあたり
   ふと寒くふとあたたかや遅ざくら
   津に住んで津守といへる棕櫚の花
   永き日の丸太担いで来たりけり
   月見草咲き初む浜に市の立つ

                  

by masakokusa | 2018-10-29 20:28 | 草深昌子の俳句近作 | Comments(0)
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