草深昌子句集『金剛』・書評抄録(その6)
☆『絵硝子』(和田順子主宰) 二十二年記念号 平成301月号


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句集を読む    谷中淳子


 草深昌子著 『金剛』


「青草」主宰の第三句集である。

 草深氏は「雲母」「鹿火屋」で研鑽を積まれ、現在「晨」同人として活躍されている。

 氏の心に溜まった情景は魅力的である。

 情景は優れた表現力により端正な俳句となり、読み手の心に余韻を残す。


  掃苔の大東亜とぞ読まれける

  母と子に一つマントや石畳

  赤ん坊に手を振る別れクリスマス

  対岸の椅子に色ある残り鴨

  蚕らにひまなき振子時計かな

  夕月にはくれんひらきかかりたる

  のんき屋といふは電気屋燕の子

  をさなき子まつくらといふ木下闇

  鴨塚といふもののあり鴨来たる

  遠足のおどろく大き岩の割れ

  側溝に水無き蛇のすすみけり


 次に、作者の感覚と季語の本意への理解が冴えた作品を紹介したい。

 

  七夕の傘を真つ赤にひらきけり

  すみよしといふも涼しき社かな

  涼しさの丸太ん棒に座りけり

  三伏や金の佛に金の蓮

  もの言へば連れのうなづく水澄めり

  夏館ものの盛りは過ぎにけり


 草深氏はあとがきで、「晨」大峯あきら代表の「季節とはわれわれ自身をも貫いている推移と循環のリズムのことで何一つこのリズムから自由になれない」という言葉を引用されている。

 氏は、この言葉を深く体得されていると思う。

 だからこそ、氏の作品は、同じようにそのリズムの中生きている我々の心に響くのである。

  


by masakokusa | 2018-01-31 19:46 | 第3句集『金剛』 | Comments(0)
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