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WEP『俳句通信』94号 ・ 実力作家7人競詠20句
      

          盤石                  草深昌子


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       盤石を叩いて竹のばつたんこ

       頬つぺたの赤い案山子はべべ着たる

       髪切つて首あらはるる花芙蓉

       蜩の座敷柱に凭れをり

       秋草にところどころの巨木かな

       その裏手遊園地なる竹の春

       蜻蛉の道に研屋の出てゐたる

       秋の日のかちりかちりとちりれんげ

       首塚の角を曲がれば花野かな

       花野行く靴脱げさうになりもして

       一穂の水引草にとどまれる

       鉄瓶のやうなる秋茄子の光り

       大山の麓のどこも落し水

       野分だつ茶房にビール飲んでをり

       花束を提げて野分を来りけり

       たっぷりと丈ありにけり穴まどひ

       小鳥来るこの街ぢゆうが古本屋

       東京に東京湾の露けしや

       秋風のどこを撫でても撫仏

       鬼城忌の雀黙つて飛びにけり



   草深昌子
   くさふか・まさこ

   昭和18年(1943)2月17日・大阪府生まれ
   昭和52年「雲母」入会
   「鹿火屋」同人を経て、平成12年「晨」(大峯あきら代表)に同人参加
   句集に『青葡萄』『邂逅』など


(平成28年10月14日発行WEP『俳句通信』所収)
 実力作家7人競詠7句
 佐藤麻績「坊津」・中村和弘「激流」・鈴木太郎「大文字の火」
 草深昌子「盤石」・染谷秀雄「近江の秋」・寺井谷子「白粥」・柴田佐知子「月光」
by masakokusa | 2016-10-31 23:59 | 昌子作品抄 | Comments(0)
秀句月旦・平成28年10月
 
 
  三千の俳句を閲し柿二つ     正岡子規


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 正岡子規と言えば、

   柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺

の一句が浮かぶように、子規と柿は切っても切れない仲である。

 子規は果物好きであったが、わけても柿が大好物であった。

   柿の実やうれしさうにもなく烏
   村一つ渋柿勝に見ゆるかな
   柿くふて文学論を草しけり
   禅寺の渋柿くへば渋かりし
   柿喰の俳句好みしと伝ふべし

 他にも柿の句は山ほどある。
 そして、明治34年、

   柿くふも今年ばかりと思ひけり

 この句には、「きざ柿の御礼に」という前書きがある。
 きざ柿とは、木に付いたままで赤く甘く熟した柿のこと。
 哀れ、来年はもうこんな美味しい柿は食べられないであろうと、死期の近いことを、感じ入っているのである。

 さて、掲句は三千の句を閲(けみ)して、つまり選句をして、そのあとにまるでそのご褒美のように垂涎の柿を二ついただいたというのである。
 三千はもとより、千の三倍というような実数ではなく、多くの数ということであるが、柿の二つに対して、この三千は何とまあ実感を伝えてあまりある数詞であることか。
 淡々と叙しただけのように見えて、そこには子規の全体重が乗りかかっている重厚さ、それでいてすっきりとした気分までもが漂っている。
 「柿二つ」は、梨でも桃でもない、柿以外には置き変えられない光を放っている。
 底の座った柿の形態のありよう、その渋さも甘さもよしとした格別の味わい、二つの柿こそは、三千の俳句を閲するに足るものとして相呼応しているのである。
by masakokusa | 2016-10-31 19:56 | 秀句月旦(3) | Comments(0)
晨集散策          菊田一平
   

   本丸の北の一郭鳥の恋       草深昌子


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 本丸の北の一郭と言えば御台所や側室のいるあたり。
 江戸城ならさしずめ大奥をさすのだろう。
 今はないその一郭で鳥が恋を育んでいるというのだ。
 現実的にはそういうことなのだけれど、読み手は、春日の局や絵島・生島の時代に歴史を遡り、
奥女中たちのひめやかな恋模様に思いを馳せる。

(平成28年9月号「晨」所収)
by masakokusa | 2016-10-29 22:42 | 昌子作品の論評 | Comments(0)
『カルチャー』『青草』選後に・平成28年9月       草深昌子選
「セブンカルチャー」並びに「青草」各会の〈今月の秀句〉をあげます。

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   家移りや鱗雲さへ新しき   栗田白雲     
   無花果や埃まみれの乳母車     松尾まつを
   秋燕棚田高きを渡りけり        松尾まつを
   煩悩の頭上過ぎゆく夜長かな     眞野晃大郎
   曼珠沙華ブルドーザーを見下ろしに   日下しょう子
   ざわめきの街に蜻蛉のあふれけり   川井さとみ
   石段に転びて起きぬ秋の風       田渕ゆり

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   秋霖や捻れブランコそのままに     佐藤健成
   鳥兜降り出す雨に光りけり       森田ちとせ
   白露のざんざと谷戸の深けにけり    坂田金太郎
   三代を女系の農家鶏頭花        山森小径
   渡り鳥ひいふうみいと消え去りぬ     吉田良銈
   秋茜スケートボードを躱しつつ      二村結季
   古切れに涙の滲む夜長かな       河野きな子
   菩提寺の坂を転がる虚栗        末澤みわ

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   足元の紅きあはれや萩の花       木下野風
   鰯雲噴煙呑みて消えにけり       森川三花
   野分して皇帝ダリア倒れけり       鈴木一父
   彼岸花校庭に立つ子らの足       菊竹典祥
   盆の月母の齢となりにけり       中澤翔風
   朝露に草引き抜けば蛙かな       潮雪乃
   鶏頭の葉脈までも朱なりけり       高橋まさ江

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   十六夜やかすかに縁のけぶりたる       佐藤昌緒
   朝露の足元濡らす冷たさよ          福山玉蓮
   朝霧の流れて街の色となり          小川文水
   梨売りの婆の一声響きたる          長田早苗
   一粒の雨にせかるる葛の道          伊藤翠
   折紙を解きまた折る夜長かな          藤田トミ
   山頂にスティック立てて涼新た        中原マー坊
   野分あと人の行く声響きけり         柴田博祥
   一つ大き伸びして秋思払ひけり        石堂光子
by masakokusa | 2016-10-01 23:08 | 『青草』・『カルチャー』選後に | Comments(0)
昌子365日(自平成28年9月1日~至9月30日)
 

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      9月30日(金)      花小さく莟小さく秋の蝶

      9月29日(木)      板塀の隙間覗けば赤蜻蛉

      9月28日(水)      赤ん坊にもの問うてをり水の秋

      9月27日(火)      播州を来たれる秋の扇かな

      9月26日(月)      孑孒を柄杓に掬ふ秋の声
    
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      9月25日(日)      雁や胸に抱く子の何か言ふ

      9月24日(土)      そのこゑの齢に似合はぬ新酒かな

      9月23日(金)      秋雨の幹を欅と見て過ぎぬ

      9月22日(木)      一葉落つ前にうしろに釈迦如来

      9月21日(水)      たまに顔上げることある夜なべかな

 
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      9月20日(火)      仲秋や石にすがりて蝉の殻

      9月19日(月)      子規の忌の鴨居に首をすくめたる

      9月18日(日)      大山の一段高き稲を刈る

      9月17日(土)      二人ゐて二つ机や昼の虫

      9月16日(金)      飛石の一つに二歩や小鳥来る

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      9月15日(木)      人踏んでいよよぬかるむ萩の花

      9月14日(水)      洋館にマイクをつかふ霧の夜

      9月13日(火)      蟻をやり過ごせる蟻や秋の道

      9月12日(月)      鶏頭に立つて動かぬ雨の中

      9月11日(日)      小鳥来る子規の机は修理中
 
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      9月10日(土)      落ち合うてすぐの飲食秋めきぬ

      9月9日(金)      秋雨や木に咲く花の色濃ゆき

      9月8日(木)      秋の雲入道雲のなりをせる
   
      9月7日(水)      南北に駅舎長しや鰯雲

      9月6日(火)      水澄んで団子に箸をつかひをり

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      9月5日(月)      唐門の輝く秋の日傘かな

      9月4日(日)      野分だつ茶房にビール飲んでをり

      9月3日(土)      秋風のどこを撫でても撫佛

      9月2日(金)      髪切つて首あらはるる花芙蓉

      9月1日(木)      草叢に蝉の鳴きける九月かな

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by masakokusa | 2016-10-01 18:25 | 昌子365日 new! | Comments(0)