鶏小屋を鶏出はらひし鎌祝 草深昌子
「ににん」春号より。
今月号の題詠は「祝」。祝の文字を入れての競詠が並ぶ中で、掲句が目に飛び込んで来た。
季語「鎌祝」は、稲刈りを終えた後の刈り上げの行事である。九州地方では「鎌払い」と言う。稲を刈った鎌に感謝する行事で、鎌を清めて床の間に飾り、お赤飯や餅を供える。作業を人に頼っていた頃は、お世話になった人達を招いて祝の宴となっていた。
「鶏小屋を鶏出はらひし」と秋晴れに鶏たちも、自由を与えられているのである。のどかな農家の佇い。
「祝」の題詠に「鎌祝」が浮かぶ作者に好感が持てる。
(2006年7月1日発行・俳誌「白桃」伊藤通明主宰・№255)