『交響』(鈴木昌平主宰)・句集巡礼

 草深昌子句集『邂逅』 ふらんす堂刊  鈴木恭子 

 大阪生まれ。「雲母」「鹿火屋」に学ぶ。第一句集『青葡萄』の刊行は入俳後約十五年の後。その後「鹿火屋奨励賞」「深吉野佳作賞」を受賞。原裕主宰の逝去に伴い「鹿火屋」退会。2000年に「晨」と「ににん」に参加。俳人協会会員。この句集は第一句集の10年後の刊行ということになる。著者はまた、超結社の句会をかけがえのないものとし、その中心である岸本尚毅氏の栞文をいただいている。氏はその中で「この句集は、総じて言葉に対する制御が行き届いている。写生句の汲めども尽きぬ面白さは、言葉を微妙に操りながら、風景を手繰り寄せるように描く」とのべる。

  赤梨に田舎の目差しとぞ思ふ
  蟻穴を出づる出会ひの辞儀あまた
  ぼうたんに非のうちどころ無くはなし
  うしろ見るための鏡も夏の宵
  白梅のほかは夜空となりにけり
  人たれも背中忘れてみる良夜
  二人子に一つ四温の乳母車
  帰省子に階段一つづつ鳴りぬ
  ピーマンもトマトも赤く星逢ふ夜
  おしなべて秋草あかきあはれかな

 
 (2003年10月1日発行、鈴木昌平主宰「交響」2003年秋号 p44所収)          
by masakokusa | 2007-06-10 20:54 | 『邂逅』書評抄録1
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