『食の一句』--今日出会う名句    櫂 未知子
    

 11月30日

      手毬麩を買ふや時雨のはなやぎに      草深昌子



 「柔らかいが口中では溶けず、一度軽く抵抗したうえで従ってくれる食材」が私は好き。たとえば葛切や白滝、タピオカ、そして掲出句の〈手毬麩〉など。麩は乾燥となまのがあるが、この麩はもちろん生麩である。桃色や緑の糸が小さな小さな丸い麩を彩っていて、溜息が出るほど愛らしい(その分、高価)。
 伝統的季語〈時雨〉は常に哀れでわびしいとされたのが、この句は、その時雨に華やぎを見出した、ごく新しい感覚の句である。
                                (『邂逅』)季語=時雨(冬)



(2005年7月1日発行・ふらんす堂 「食の一句」櫂未知子著作・365日入門シリーズ①199p所収)


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by masakokusa | 2007-01-16 10:45 | 昌子作品の論評
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