この度はご高著『星の松明』をご恵贈たまわりまことに有難うございました。
素晴らしい第六句集の御上梓を心よりお喜び申し上げます。
本当におめでとうございます。
川三つ出合うところや風涼し
朝市の外れに牡蠣を焼く匂い
短日の何度も鳴りぬドアチャイム
海を見る時の薄目や春隣
落つるものみな積りゆく春の雪
牧場の平らな石や蠅生る
忍冬口に咥えて歩く道
うなぎ屋ののれん真白き真昼かな
新米を後部座席に座らせる
ポケットに焼芋のある待ち合せ
はこべらも羊の口も柔らかし
天道虫飛ぶ時星を失くしたり
梅雨深しウーパールーパー正面に
秋暑し行き詰まりたる掃除ロボ
秋日和どこから見ても岩木山
鯛焼の紙の袋の湿りかな
寒鴉石と土とを噛み分けて
山麓を散歩しつつお作りなられたと、さりげなく仰せながら、臨場感たっぷりに、
私にも自然の中に吹かれる気分のよろしさを終始満喫させていただき、つくづく気持ちよくなりました。
やさしくも理知的なまなざし、何より、俳諧味があふれていて、心がほぐれていくのでした。
当たり前のことが当たり前でないことに、その都度気付かされることのおもしろさがたまりませんでした。
ことにこんな風はなんて素敵でしょう、
二ン月の風に鳶の流されて
風いつも上を吹くだけ犬ふぐり
私もこんな風にあたってみたいものです、いやあたっていたのにも関わらず見逃していたのでした。
当地も丹沢山の麓とてよく歩くのですが、
西池みどり様のような柔軟にも大らかな心で自然に接したいものだと感じ入りました。
(俳句雑誌「ひまわり」2020年5月号所収)