題詠選     兼題=笹鳴・茶の花      草深昌子選

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 特選 


   笹鳴の西へ西へと移りけり     芝田 太


西へ西へという、ただそれだけの不思議がダイナミックです。笹鳴は金色の夕日に染まっているのでしょう。



   茶の花が咲いてをり空凪いでをり     山内利男


 ゆったりと天地を押し広げたような表現が、初冬の清らかにもあたたかな日和を存分に感じさせてくれます。




   茶が咲くときまつて母のことを言ふ     田中美由紀


 白々として慎ましやかな茶の花。でも、その蘂は、はち切れそうな金色に輝いています。まるで母のように。



   秀逸


    しののめの笹鳴今日の吉兆に      長尾美保子

   茶の花に顔近づけし夕べかな      上野鮎太

   茶の花のひとつこぼれてつづかざり   山内節子

   茶の花の大きく咲けり神宮寺      藤岡薫

    水分や実生育ちの茶の咲ける      吉永佳子

   

   入選


    犬の子に茶の花日和つづきけり     天野桃花

   茶の花や鈴鹿連峰よく見ゆる      久田草木

   年寄りの話筒抜け茶の咲けり      前田摂子

   柴山は在所のはづれ笹子鳴く      貴田寿美子

   茶の花や真昼の月の高くあり      二宮英子

   柔道着干され茶の花日和かな      森山久代

   他60句


 選を終えて


私は句会が大好きです。自分の俳句の不出来はさておいて、人さまの俳句に敬意を表する場としての句会は、楽しくてなりません。つまり選句の緊張がたまらないのです。そんな私に、題詠選という喜びの機会をいただき、気合を入れました。果たして、皆さまの渾身の俳句を前に、たじろぐばかりでした。今さらに、俳句の鑑賞と実作は、背中合わせであることに感じ入った次第です。


(「晨」平成29年11月号所収)


by masakokusa | 2017-11-06 21:26 | 俳論・鑑賞(2)NEW!
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