『俳壇』3月号 ・ 現代俳句の窓
                          
      毛 衣

                                        草深昌子
                                       (青草・晨)

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       毛衣や三百年の松を前

       枯芝の青草勝ちに広きこと
 
       耳袋かけてお寺は素通りす

       二つ灯のついてうれしや冬座敷

       山茶花に透き通りたる硝子かな

       冬や実の草にまつくろ木にまつか

  
  (『俳壇』2017年3月号所収)
# by masakokusa | 2017-02-28 23:57 | 昌子作品抄 new! | Comments(0)
結社誌『海程』(金子兜太主宰)より
『海程』2017年2・3月号に、
「俳誌往来」として、藤田敦子氏により、
『晨』(平成28年11月号)が紹介されています。

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『晨』平成28年11月号 第196号
代表  大峯あきら
創刊  昭和59年
発行所 奈良県吉野郡大淀町増口
師系  高濱虚子

「晨」は茨木和生氏、岩城久治氏など多くがそれぞれの結社に属する人の集まりで、
超結社の同人誌である。
哲学者でもあり僧侶でもある俳人、大峯あきら氏の「俳句は自我の詩ではなく、存在の詩である」という信念のもと創刊された。
雑詠は三氏(筆者注釈・現在は大峯あきら氏、山本洋子氏の二氏)による共選である。
また同人相互の選句、鑑賞、批評、論評が行われ、
結社では主宰でもあっても、ここでは、みな同じフイールドで俳句を語る。純粋な「句座」が存在している。

「特別作品」より
日を掬ひ掬ひ一葉の落ちにけり     平田冬か
しろじろと顎ありけり穴まどひ       草深昌子
子が眠る母の夏セーター掴み       佐保光俊
戸も窓も開きたるまま秋灯         杉田菜穂

「晨集」より
今朝秋の机の位置を少し変へ      大峯あきら
火蛾払ひつつ密猟の打合せ       茨木和生
芋の葉の露や命毛噛みくだく      岩城久治
宇治川は黒髪となる夕野分       倉橋みどり

「光芒7句」雑誌等より7句、独自の鑑賞が光る。
「俗語を正す」 山内利男
涼しげに地獄を待てり被爆牛(俳壇8月) 高野ムツオ
麦秋の夕日成人映画館(俳句8月号)   夏井いつき
鯨面にして仏顔蝉生まる(俳句9月号)  宮坂静生 

(『海程』530号2017年2・3月号所収)
# by masakokusa | 2017-02-28 23:49 | 昌子作品の論評NEW! | Comments(0)
昌子365日(自平成29年2月1日~至2月28日)

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       2月19日(日)     その鳥は梅に止まらず松にあり

       2月18日(土)     恋猫や庭のどの木も丸坊主

       2月17日(金)     西行忌池を大きくまはりけり

       2月16日(木)     子を胸に抱いて男の梅を見る

       2月15日(水)     踏青のいつしか森を抜けにけり

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       2月14日(火)     鋸を引くやうなる春の鳥のこゑ

       2月13日(月)     冴返る石に躓きやすきこと

       2月12日(日)     垣繕ふその内側にまはりもし

       2月11日(土)     鼻の穴亀に二つや水温む

       2月10日(金)     天と地を一つ舞台に冴返る

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       2月9日(木)      水温む梯子立てたり寝かせたり

       2月8日(水)      背ナにして春の障子の熱きこと

       2月7日(火)      木槌もて金閣寺垣繕へる
 
       2月6日(月)      寒明や耳より大き耳飾り

       2月5日(日)      大空に首をまはせる春日かな

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       2月4日(土)      薄氷に朝日大きく開きたる

       2月3日(金)      節分の夕雲ちぎれちぎれかな

       2月2日(木)      寒日和石を箒に掃いてをり

       2月1日(水)      路地に見て海盛り上がる四温かな 
# by masakokusa | 2017-02-28 22:23 | 昌子365日 new! | Comments(0)
草深昌子句集『金剛』 出版記念祝賀会
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平成29年1月29日(日)
 草深昌子句集『金剛』 出版記念祝賀会を、
 霞が関ビル35階・東海大学校友会館「望星の間」にて開いていただきました。
            
 岸本尚毅さま、岩淵喜代子さま、木村定生さま、荒井八雪さま、長島衣伊子さま、
 藤埜まさ志さま、鈴木不意さま、山岡有以子さま、ご来賓の皆様、「青草」会員の皆様、
 43名で大いに盛り上がりました。


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俳人 岸本尚毅さまにご来賓代表ご祝辞を賜りました。

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アルピスタ 塩満友紀さまの演奏は夢のように美しいひとときでした。


―この度は第三句集「金剛」のご出版心よりお祝い申しあげます。金剛山にあたる輝かしい朝日の力を思いますー何より嬉しいお祝電をいただきました。


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乾杯の音頭は木村定生さま
                          「青草」の皆さま
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  ~ ふらんす堂代表山岡喜美子様による「ふらんす堂編集日記」より~

         師への思いをこめて 

               

 昨日は、ふらんす堂より昨年第3句集『金剛』を上梓された草深昌子さんの出版記念会が霞ヶ関ビル「東海大学校友会館」にて行われた。
 担当スタッフであったPさんが出席。

 草深昌子さんが主宰をされている「青草」の会員の方々が発起人となり、草深さんとご縁の深い方々が集まって、楽しいお祝いの会が催されたのだった。
 俳人の岩淵喜代子さん、岸本尚毅さん、木村定生さんなどわたしもよく存じ上げている方々は、草深さんとは句座を共にする俳句仲間である。

(すこし長いが猛烈にして面白いご挨拶なのでそのままご紹介します)

 皆様本日はご列席頂きまして本当にありがとうございます。この霞が関35階、誠に高いところからではありますが、心より御礼を申し上げます。
 今日ご列席頂きました俳人の皆さま、句友の皆さまを前に致しまし、私って何てここまで多くの俳句の先生、俳句の皆様に恵まれて来ましたことかとつくづく幸せに思いました。それでちょっとその 一端を語らせて頂いてもいいですか、語るほどのこともないんですけれども(笑)

 私が初めて句会に参加いたしましたのはもう40年前のことです。このように春も間近な頃のことでございました。先生は飯田蛇笏の高弟で植村通草先生です。先生はいつも美しくお着物をお召しでございましたけれども、私にとりましてはとても何ていいますか、「おばあちゃん」という印象が強くありましたね。いつもおばあちゃんと思っておりました。よく思えば私の今の年齢だったんですね。
 ところが私は厚かましいことでございますけれども、自分のことを少しもおばあちゃんとは思ってないんですね。本当にあっという間に日が経ちました。十年一日の如しといいますけれど、私にとりましてはまさに四十年一日の如しというところでございます。

  早春やニコライ堂のうすみどり

 これが私の初めての俳句でございます。これを出しましたとき先生が「参った参った、もう私にはこんな俳句はできないわ」とすごくほめてくださったんですね。それですっかり俳句にはまってしまいました。でもその喜びもつかの間で、すぐその後からは出句するたびに「それがどうしたの」って言われてとても厳しくて、それで何回も泣きましたね。まだ30ぐらいの若さでしたから。とことん「それがどうしたのよ」って責めてくるんです。でも今はその厳しさを懐しく思い出されます。

 この初めて入りました「雲母」という結社は何千人も会員がいまして、飯田龍太先生が遠くはなれてお住いでしたから郵送で作品を送るだけなんですね。そうしますと、自分で「今回はうまくいった」って、すごくいいのができたと思うのは全部アウトでしたね。それでふっと見たまま感じたままを書き付けたような句がどういうわけか入選するんですね。自分のほんとうに正直なことをふっともらしたような句が。それが私は遠く離れているのにどうして飯田龍太先生は私のことがわかるんだろうってずっと何かこう、目をつけてくださっているような気がして、それが私の初学時代の飯田龍太選というものが非常に不思議でしたね。

 それから、私は「鹿火屋」に入会いたしました。「鹿火屋」は原裕先生の結社です。そこで出会いましたのが本日ご列席の岩渕喜代子先生です。岩渕喜代子先生は当時の「鹿火屋」のトップの俳人でございましたけれど、恐れ多くも、毎日毎日俳句の交換を葉書でいたしましたね。今だったらiPhoneとかでやるんでしょうけれども(笑)毎日毎日一句を葉書に書きつけて投函することもやりましたし、テーマも出して何十句何百句と競泳するというのもやりましたし、全国津々浦々吟行にいきまして、本当に切磋琢磨ということをさせていただいたんですね。俳句っていうのはただ黙ってつくるしかない、そういうことを教えて頂いたんです。黙ってつくるしかないという純粋無垢の精神を養って頂いたんですね。今以てそれを徹底して教えられています。

 それから出会いましたのが、「晨」の大峯あきら先生、山本洋子先生に出会いました。この幸せな出会いを機会に、私は俳句を一から勉強し直すことにしたんです。
 その大きな力になっていただいたのが、先ほどご挨拶をされた岸本尚毅先生でございます。私は普段「尚毅さん、尚毅さん」と呼ばせて頂いていますが、いつも心の中では最大の尊敬の念をもって「岸本尚毅先生」でございます。先生なくして今の私はございません。こういうことを初めて申し上げますけれども、尚毅さん、本当にありがたく思っております。

 岸本尚毅先生はもう20代の頃から俳壇屈指の俳人として高名の先生でいらっしゃいましたから、私が初めて句会に参加するときはドキドキしましたね。それからもう20年近く経ちますけれど、未だにドキドキというか緊張の連続ですね。慣れ合うということがないです。その割にはビールを飲んでふてぶてしいんですけれども(笑)気持ちの中では非常にドキドキしてるんですね。いつまで経っても慣れることがないです。ですから句会で先生の作品に触れるたびに驚かされますし、選者の御選があるたびに驚かされますし、俳句の醍醐味ということをそこで味わっています。

 考えてみましたら先生は長身でスマートな方ですから、「俳句の実作」というのが右足にあたるんでしょうかね。それから「俳句の鑑賞」というものが左足にあたるのでしょうか。その自然な歩き姿が俳句の鑑賞と実作というになるとおもいます。その俳句の鑑賞と実作が不可分の関係で繋がっていてああなるほどと頷かされますね。
 そこで私は、初めに申し上げました飯田龍太先生の「俳句の選の不思議」がだんだん解けてきまして、今頃になって選のありかたがようやくわかってきたように思います。これはすべて岸本尚毅先生の句会に出させて頂いておかげで、今更ながらありがたく思っております。

 それで申し遅れましたけれども、本日このような会をお作り頂いた松尾まつをさま、松尾さまは松尾家の子孫だと私は勝手に思っておりますので、松尾まつを様は、先生をしながらなおかつ私の句会「青草」に入って来て下さった方なんですね、
 そういう方を含めまして、ここにお集まりの、青草の私の教室にずっといらしてくださっている皆様に一番心から御礼を申し上げたいと思います。今になって通草先生の気持ちがわかるんですね。私は皆様の元気いっぱいの俳句に対して、「参った参った」の連続です。本当に老いている暇もなくて歳をとってる暇もなくって、いつも清新な気持ちで立ち向かわなければなりませんでした。青草の皆様にお会いすることもなければ、今日このように「金剛」という俳句出版にはいたらなかったと思います。生まれなかったとおもいます。

 「金剛」というタイトルは、金剛山のことではありますけれども、金剛石という極めて硬い石を連想するとおもいます。これも参加してくださっている方に伺っている「金剛石も磨かねば玉の光も添はざらん」というような昔の歌もあったそうです。金剛石も磨かねば光ることがないでしょう、という意味でしょうね。
 
 これからも俳句は一人ではできませんので、皆様のお力を借りまして、俳句という堅牢なるものをひたすら磨いてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 最後にはなりますけれども、私の青草の中で、最高齢の吉田良銈様という90歳の方がいらっしゃいます。その方の年賀の1句をもってご挨拶に代えさせていただきたいと思います。
 
 青草や青いやまして草深く   良銈

 本日はどうもありがとうございました。


 会場の方々を笑わせながらもいかに俳句と真剣に取り組んできたか、溢れる情熱を以てご挨拶をされた草深昌子さんであった。

 草深昌子さま、句集『金剛』のご上梓おめでとうございます。
 心よりお祝いを申し上げます。

 鷹よりもはるけく鷹のこゑ来たる    草深昌子 『金剛』より


      (ふらんす堂代表・山岡喜美子  平成29年1月30日ふらんす堂編集日記所収)

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# by masakokusa | 2017-02-28 20:23 | 第3句集『金剛』NEW! | Comments(0)
草深昌子句集『金剛』を、結社誌にご掲載賜りました。お礼申し上げます。
☆ 『八千草』平成29年如月(山元志津香主宰)
 受贈俳書紹介  (横川博行)

『金剛』 草深昌子 句集

「晨」同人・「青草」主宰の第三句集
金地に桜吹雪をあしらった装丁の美しい句集。
金剛は吉野のある奈良県と作者の故郷の大阪府の境にある金剛山とのこと。
骨格のしっかりした格調の高い句が収録されている。

   さへづりやたうとう落ちし蔵の壁
   綿虫に障子外してありしかな
   金剛をいまし日は落つ花衣
   夏座敷白無垢掛けてありにけり
   白南風や土蔵一つが生家跡



☆ 『都市』2月号(中西夕紀主宰)
受贈句集より一句 中西夕紀抄出

   金剛をいまし日は落つ花衣   草深昌子「金剛」

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☆ 『燦』12月号(山内利男主宰)
   赤子はやべつぴんさんや山桜


☆ 『雲の峰』1月号(朝妻力主宰)
草深昌子著 句集 「金剛」
 著者は1943年大阪市生まれ。77年飯田龍太主宰「雲母」に入会。85年原裕主宰「鹿火屋」入会。2000年大峯あきら代表「晨」及び岩淵喜代子代表「ににん」に同人参加。
現在「晨」同人、俳人協会会員。「青草」主宰、カルチャーセンター講師。
「鹿火屋」新人賞、奨励賞など受賞多数。既刊の句集二篇がある。
あとがきに「『金剛』は私の第三句集になります・・第三句集をと心準備をはじめた矢先に、夫を亡くしました」とあり、その時の心情を〈人は死に竹は皮脱ぐまひるかな 大峯あきら〉に託して述べている。
また、集名について、「吉野桜吟行はかけがえのない濃密な句会でありました。美しい山桜の宿で・・「晨」の十名ほどの皆様と共に、ただ黙って金剛山に沈んでゆく夕日を眺めたことは、生涯忘れることはないでしょう」と記す。
 俳句に献身し俳句を享受する筆者の一つの到達点である。
以下、所収句より
   赤子はやべっぴんさんや山桜
   さへづりやたうたう落ちし蔵の壁
   踏青の二度まで柵を跨ぎたる
(西田洋)


☆ 『空』1月号(柴田佐知子主宰)
現代の俳句(柴田佐知子 抽出)
   奥つ城のほかは春田でありにけり 句集『金剛』


☆ 『沖』2月号(能村研三主宰)
沖の沖(能村研三 抽出)
   またたきをもつてこたふる梅の花 句集『金剛』


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☆ 『春嶺』2月号(小倉英男主宰)
句集拝見
 『句集 金剛』草深昌子
 平成16年から平成28年までの340余句を収録。第三句集。
 句集名は大峯あきら氏の住む吉野と自身の住むふるさと大阪の境に立つ主峰金剛山を懐かしむことに拠る。
   うぐひすは上千本にひびくかな
   御正忌やをりをり通る吉野線
   大晴の報恩講に出くはしぬ
   赤子はやべっぴんさんや山桜
吉野の山なみと桜が自ずと迫る。骨格が大きく、焦点が明瞭であり、かつ平易な表現に力がある。
   涼しさの丸太ん棒に座りけり
   神の留守蘇鉄は高くなりにけり
   石蕗の花さかまく波をよそに咲く
   大綿の飛んでそこなる専立寺(吉野の寺)
思い切った気風の良い句。
   赤を着て黒を履きたる初山河
   寒晴やことに港区線路ぎは
   あめんぼう大きく四角張ってをり
抒情的な表現による自然詠
   水澄みて甲斐は夕日の沁みる国

草深昌子(くさふか・まさこ)大阪生れ。
昭和52年雲母入会、同60年「鹿火屋」入会、平成12年大峯あきら「晨」同人参加、
「青草」主宰、俳人協会会員。
(山中 綾)


☆ 『きたごち』2月号(柏原眠雨主宰)
 草深昌子句集『金剛』
   無花果の見ゆる蕎麦屋の二階かな


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☆ 『氷室』二月号(金久美智子主宰)
新著紹介『金剛』草深昌子
   風の鳴るやうに虫鳴くところかな
   沈むべくありたるものも浮いて来い


☆ 『雪天』二月号(新谷ひろし主宰)
一書一誌観賞
   石蕗の花さかまく花をよそに咲く 草深昌子『金剛』  


☆ 『門』二月号(鈴木節子主宰)
 風韻抄 鳥居真理子 抽出
   ぬかるんであれば梅散りかかりけり 草深昌子句集『金剛』


☆ 『阿夫利嶺』2月号(山本つぼみ主宰)
受贈句集紹介
『金剛』草深昌子第三句集
   いつまでも沖を見てをり頬被
   梅を干し土器を干し貝を干し
   真間の井の蓋に木の実の数へられ
   伊勢道のここからけはし干大根

☆ 『大楠』1月号(川崎慶子)
受贈句集 
 草深昌子句集『金剛』ふらんす堂
# by masakokusa | 2017-02-25 10:12 | 第3句集『金剛』NEW! | Comments(0)
信濃毎日新聞
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  けさの一句

   寒晴や鼈甲飴は立てて売る     草深昌子

 縁日の屋台では、作っている過程が見られるものの人気が高い。鼈甲飴もそのひとつ。
 溶けた飴を型に入れてさまざまな形が作られ、鼈甲に似た黄金色の飴が整然と店先に並ぶ。
 できあがった飴を立てることで、互いにきらきらと輝き合う様子も、客の足を引き止める仕掛けと いえよう。
 ひとつひとつのぞき込めば、飴の中にはパリンと割れそうな寒の空が閉じ込められている。
                                      『晨』同人
              
                                    土肥あき子(俳人)

(2017年1月24日付け[信濃毎日新聞]1頁所収)
# by masakokusa | 2017-02-24 22:51 | 第3句集『金剛』NEW! | Comments(0)
『カルチャー』『青草』選後に・平成29年1月
「青草」並びに「セブンカルチャー」の〈1月の感銘句〉をあげます。

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   初句会べつぴんさんが揃ひけり     山森小径

 旧臘、発刊した草深昌子句集「金剛」の中の一句、〈赤子はやべつぴんさんや山桜〉を引いてくださったのであろう。
 その、拙句集へのご挨拶はもとより嬉しいが、事実、初句会の誰も彼もが、心優しいべっぴんさんであられたことに共鳴させられた。


 
   初日の出輪廻の中に我もあり     狗飼乾恵

 「輪廻の中に我もあり」なんて大きなことを言って成功するのは、この「初日の出」以外にはないであろう。
 一回きりの一句は、作者の実感にほかならない。
 読者もまたその実感に引き込まれる思いがする。まことに目出度い句である。


   東雲の寒九の水を供へけり     古館千世

 「東雲の」、ここに小休止がある。亡き人への心がほのぼのとこもっている。

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   初鴉鎮守の杜を飛び立ちぬ     石原虹子
 
 鎮守の社の境内にある森を鴉が飛び立った。
 いつも見慣れた何でもない光景であるが、それが元旦であることの目出度さ。
 俳句の心がまた一つ磨かれたような一句である。



   蔓草の通せん坊や探梅行     菊竹典祥

 蔓草は枯木に絡んで、ちょっと道をふさいでいるのであろう。
 ふと「通せん坊」という言葉が浮き出たところに、子供のような心弾みが思われる。
 これこそが、探梅という、日和佳き日の風趣である。



   数十年袖を通さぬコートかな     潮雪乃

 誰にも思い当たることでありながら、誰もこのようには詠えなかった。
 上質で捨てるには惜しいものであるが、時代後れもはなはなだしいものでもある。
 コートのあわれがふと歳月のあわれに重なってくるようである。



   冬薔薇マリアテレジアロワイアル     黒田珠水

 まりあてれじあろわいある、意味不明ながら、なんて素敵な韻律であろうか。
 舌の回らぬような、それでいて何だか高貴なるような名前の羅列。
 この淋しさの美しさこそが冬の薔薇のありようである。

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   小正月モヒカン刈りの袴かな     松尾まつを

 モヒカン刈りとは、頭部の左右を剃って、中央に一直線に髪を残した刈り上げ方をいうらしい。
 そんな若蔵が袴に威儀を正してやってきたのである。
 小正月は、満月の夜を正月として祝った古い時代の名残で、今も田舎などでは餅を搗いて祝う習慣が残っている。
 モヒカン刈りは、一見いかさま風に見えて、いかにも小正月に似つかわしいように思われるではないか。小正月のちょっとした賑わいが楽しい。


   手を振れど背ナの丸まる寒さかな       坂田金太郎
   風呂吹きや昨日のやうな一昔         佐藤昌緒
   結氷に閉ぢ込められて目高かな        石堂光子
   探梅や静まり返る田んぼ道          菊地後輪
   バス停やマスクの人に見つめられ       藤田トミ
   探梅や絹の道てふ石畳            森田ちとせ
   初詣千木より低き宵の月           眞野晃大郎
   門松や朝日のなんとやはらかき        北村たいし
   一椀の粥をいただく初薬師          河野きな子
   でんでんと太鼓の響く寒の入         神崎ひで子
   大年や蒸して煮詰めて薯の餡         二村結季
   かさご煮の小さく甘く初句会         間草蛙
   三代の振って骰子絵双六           芳賀秀弥
   角巻や包まれもして旅にあり         熊倉和茶
   初夢に忘れし人がありありと         吉田良銈
   大凧や百人の足駆り立てて          高橋まさ江
   白梅や坐して目合はす菩薩像         伊藤翠
   男手の雑煮をまづは仏壇へ          中原マー坊
   獅子舞の横断歩道渡り切る          湯川桂香
# by masakokusa | 2017-02-17 22:42 | 『カルチャー』『青草』選後に | Comments(0)
昌子365日(自平成29年1月1日~至1月31日)
 
       1月31日(火)    外套をGOKURAKU亭に吊し売り

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       1月30日(月)    日曜の霞が関や春隣

       1月29日(日)    古書店に新書も少し日脚伸ぶ

       1月28日(土)    野良猫のここが好きなる冬薔薇

       1月27日(金)    文机に何かこぼるる虎落笛

       1月26日(木)    春を待つ朴の落葉に塵溜めて

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       1月25日(水)    廃屋を紐で縛って笹子鳴く

       1月24日(火)    鴉とも鳶とも見ゆる寒さかな

       1月23日(月)    探梅の金婚式の日なりけり
 
       1月22日(日)    大川やここやあそこのゆりかもめ

       1月21日(土)    小正月終着駅に下りたちぬ

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       1月20日(金)    春めくやおむつ替へたる嬰の顔

       1月19日(木)    待春の大桟橋や踏めば鳴る

       1月18日(水)    カンテラに絡む枯蔓門口に
      
       1月17日(火)    尖塔を川の向うに冬萌ゆる

       1月16日(月)    乗初や富士が見えたり隠れたり

 
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       1月15日(日)    早梅の鳥に垂れては跳ね上がり

       1月14日(土)    枯芝のまるでバリカンかけたやう

       1月13日(金)    大き日の光るかぎりの氷かな

       1月12日(木)    猪鍋の芹の緑に尽きにけり

       1月11日(水)    ふと蝶の立ちしが如き枯葉かな
      
 
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       1月10日(火)    虚子茅舎たかし青畝と読みはじむ

       1月9日(月)     社とも寺ともつかぬ寒詣

       1月8日(日)     宝船敷いて灯火まだ消さぬ

       1月7日(土)     端つこに座つて冬日目の当たり 
     
       1月6日(金)     山茶花に透き通りたる硝子かな

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       1月5日(木)     熱燗や首相官邸見下ろしに

       1月4日(水)     断層のあからさまなる寒椿

       1月3日(火)     葉牡丹を活けて平安秘仏展

       1月2日(月)     二日はや大きな皿にモンブラン
     
       1月1日(日)     大いなるものに赤子の御慶かな

 明けましておめでとうございます。
 『草深昌子のページ』をお開きくださいまして有難うございます。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。  
 
               平成29年元旦                草深昌子 

# by masakokusa | 2017-01-21 21:48 | 昌子365日 new! | Comments(0)
読売新聞   「四季」長谷川櫂選
 
  うれしさはひつくりかへる歌留多かな    草深昌子

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 歌留多取りの場面。
 あまりに勢いよく取ったので、隣の札がひっくり返ってしまった。
 しかしこの句を読めば、札がうれしがってひっくり返ったようではないか。
 命なきものにも命がやどる。
 これも言葉の力の一つ。
 句集『金剛』から。

# by masakokusa | 2017-01-15 22:32 | 第3句集『金剛』NEW! | Comments(0)
詩歌句年鑑 2017      草深昌子(晨・青草主宰)
  
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   風の鳴るやうに虫鳴くところかな

   盤石を叩いて竹のばつたんこ

   蝌蚪の来て蝌蚪の隙間を埋めにけり

   門入ると襖外してゐるところ

   網戸より沖の一線濃く見たり


(ことばの翼 詩歌句 年鑑〔俳句〕2017 所収)
# by masakokusa | 2017-01-09 11:07 | 昌子作品抄 new! | Comments(0)